王子と砂漠女 ページ1
「麻倉さーん、まって！」
後ろから、低音の心地良い優しい声がした。
「あ、櫻井さん」
後ろからスーツ姿で走って追いかけてきた櫻井さんを振り返ってついデレッとした。
世界一かっこいい。
世界一かわいい。
ああ今日もいい香りがする。
「はぁ、追いついた。おはよ」
「おはようございます、櫻井さん」
「今日もいい天気ー」
うーん、って空を見上げて肩甲骨をぐぐぐと寄せて、アハって笑う横顔。
くううう。
朝から眼福。
幸せすぎる。
周りが、あ、櫻井さんだ、って顔をしてチラチラ見てる。
櫻井さんは誰もが知ってる大手企業、サクラグループの創始者の直系のひ孫にあたる。
つまり彼のお祖父ちゃんのお父さんがサクラグループを作った社長さん。
サクラグループといえば日本企業売上高ランキングで必ず10位以内に入るような会社だ。
このニコニコしてる青年が未来の日本経済の一端を支える存在になるのは想像に難くない。
母体が大きくなりすぎて、表向きは同族経営だけでは立ち行かなくなってはいるけど、持ち株の3分の1はその家族が持っている。
つまり。
このニコニコと朝から爽やかさを振りまいて、私なんかを追いかけてきて、おはよー！ってキラキラの粉をふりかけてきたこの彼は。
正真正銘、世が世、時代が時代なら、彼は王子様なのだ。
但しこの彼。
全く得体がしれないというか。
毎朝同じ時間に会う。
実家のご邸宅は会社のすぐ近くになはずなのに、何故か私が駅から出たら必ず私に声かけてくる。
初めてあった日、
「麻倉さんっておっしゃいましたっけ？開発部のデータ入力の……」
と声をかけられた。
転職したばかりで、しかも派遣の私の名前を覚えてる人がいることにまず動揺した。
「あ、はい……」
「僕、櫻井といいます、今は総務にいます」
今は？
妙な言い方をするな、と思っていたら会社についてすぐに謎が晴れた。
「どうして王子と一緒に出勤してきたの！」
と開発部のお姉様方に詰め寄られたからだ。
そこで彼のことを知った。
正直、それ以上のことは知らないし、仲良くなる接点もない、はずなんだけど。
「麻倉さんって下の名前、Aさんだよね？」
なんで？
何故派遣ごときの私の名前を知ってる？
「はい……」
「Aちゃんって呼んでいいかな?」
名前を呼ばれて夢見心地……
にはならない！
私の脳はこの程度で花畑にはなれないほどに。
どこまでも渇いた砂漠なのだ。
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susakinyanko(プロフ) - 駅前のハトがツボ過ぎます。死ぬかと思った笑 (12月15日 15時) (
レス) @page41 id: 9ec95cf02d (このIDを非表示/違反報告)
ハル(プロフ) - 面白い！眠気がとんだよー！よしのさん好き(^^) (2020年1月30日 10時) (レス) id: 12e1cc5b48 (このIDを非表示/違反報告)
花乃(プロフ) - こんにちは。やっぱりよしのさんのお話好きだー！！と叫ばせていただきます(*´∇｀*) (2020年1月26日 17時) (レス) id: 95a7b7882e (このIDを非表示/違反報告)
ちこ(プロフ) - こんにちは。よしのさんの新作ですね。ゴルゴの回まで一気読みしてしまいました。とっても楽しいです！更新楽しみにしています。 (2020年1月16日 16時) (レス) id: c3adc4cd0a (このIDを非表示/違反報告)
ジュン(プロフ) - もう、さすがの一言です。やっぱり面白すぎます！最高です！ (2020年1月16日 1時) (レス) id: 586c2240fb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：よしの
| 作者ホームページ：
作成日時：2020年1月6日 0時
