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「あ、こらA！一人になるな！」
二宮さんの声を無視して裏庭に向かって走る。
だってあんなにはっきり話してたのよ？
もしかしたらいじめられた男の子が学校から抜け出してきてるだけかもしれない。
本当に鎌を持った人間がいるなら危険だもの。
相手が人間なら逮捕できる。
あの子を助けられる。
「ねぇ、どこいったの！ねぇ！」
狭い草だらけの道を通って裏庭に走っていく。
病院の中に入ってはいけないって大野さんが言ってたけど。
中に入ろうか。
確か2階は鍵が壊れてて……
ハッとして足を止める。
昨日私と櫻井さんはフェンスの穴を塞いだんだった。
だから、外から誰も入れない。
浮浪者が誰も入れないように、廃病院の周りはブロック塀があって、更にその上にはしつこいくらいの有刺鉄線がはられてある。
裏の庭に入るフェンスが一部破れていたけど、あれは大人一人がやっとくぐり抜けられるくらいの穴だった。
その穴もテープで塞いだ。
そしてそのテープは昨日、私と櫻井さんが人が入れないように、もし入ったとしてもわかるようにと適当に塞いだ、あのままで。
あの子。
どこから、中に、入ったの。
ヘナヘナとしゃがみこむ。
そっか。
あの子はオノマサトシくんなんだ。
そして。
マサトシくんは。
今でもカマキリ男から逃げている。
ぞわっ、と寒気がした。
その時。
背後の病院の中に人影が見えた気がした。
「マ……」
マサトシくん、と名前を呼ぼうとして喉まで出かかった声が凍りつく。
代わりに悲鳴を押し殺す。
右手に鎌を振り上げた男が、何かを追いかけてるような影が見えた気がした。
「……だめ、逃げて」
「A、駄目でしょ」
二宮さんが私の方にむかって呆れたように苦笑いして近づいてきた。
「二宮さん、助けてあげて」
「え？」
「マサトシくんが」
二宮さんが病院を見る。
さっき見えた影はもう見えない。
「だから、俺は助けられないんだって」
「じゃああの子は……もう何十年も逃げ続けてるってことになる！」
「……」
「早く助けてあげて……」
「だから無理なんだってば」
「……」
涙がツッ、と、流れ落ちる。
「ごめんねA」
二宮さんが私の涙を持ってたタオルでちょんちょん、と拭った。
「……」
涙がポタポタ落ちた。
二宮さんが私の頭をふわりと抱き寄せる。
「ごめん」
「二宮さんが謝ることじゃない」
「でも、ごめんね」
女神様が許してる。
だから今はちょっと胸を借りる。
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みつき - この章はにのと主人公ちゃんの絡みが好きなんです！これ読みたさにもう何度読んだことか！！ (2020年8月8日 7時) (
レス) id: 6d571bc65d (このIDを非表示/違反報告)
みに - こんにちは！もう無の証明4周目です！このお話本当に大好きで続編やビハインドストーリーも希望します！名前のところがAと表示されて変換出来ない状態なのでお知らせに参りました。お直ししていただけると嬉しいです。 (2020年6月2日 15時) (レス) id: 5d98a5a6f1 (このIDを非表示/違反報告)
nyaruru(プロフ) - 楽しみ過ぎてなかなか読み進めれなかったです。更新待ってました！と喜んでいたら、むか〜し高校生くらいのときに不思議だった話が出てきてびっくり！色の見え方や聞こえ方の話です。家族に話してみても共感されなくって、まさかここで出会えるとは感動しました (2019年11月8日 4時) (レス) id: d437e89628 (このIDを非表示/違反報告)
Chisa(プロフ) - いつも楽しく読ませて頂いてます！ (2019年11月4日 4時) (レス) id: 660ab80a22 (このIDを非表示/違反報告)
ぱん(プロフ) - もう本当すごいです。情景がありありと浮かぶし、実写化してほしい。 (2019年11月2日 20時) (レス) id: 3159ad2d1f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：よしの
| 作者ホームページ：
作成日時：2019年6月19日 17時
