26 ページ26
その日はそこで別れた。
櫻井くんと二宮くんは仲良く帰っていく。
家に帰ったらお姉ちゃんがいる。
それがなんとなく憂鬱で、つい、おばあちゃんの家に足が向いた。
チャイムを鳴らして「Aだよ」って言ったらおじいちゃんが出てきた。
「はいどうぞ」
「ただいま」
おばあちゃんは洗濯物を畳んでいて、私の顔を見てどうしたの、って言った。
「おばあちゃん私好きな人ができた」
「あらら！サッカー部の子？」
「え！なんでわかるの！」
顔を見たらおばあちゃんが吹き出す。
「バレエ頑張れって言った子でしょ」
「うん、そうだけど！」
「そうだろうなと思った」
「でもね、その子、お姉ちゃんのことが好きなんだ……」
「……」
「またおねえちゃん……」
「……」
私がタオルを畳むのを手伝い終わるまで、おばあちゃんは何にも言わなかった。
畳み終えたらそのまま洗面台の横にあるタオルを入れる棚にタオルを仕舞う。
「A」
「ん？」
「はい、ぎゅー！」
そう言っておばあちゃんが私をぎゅっと抱っこした。
おばあちゃんは私よりちょっとだけ背が低くて、私の倍くらいまるまるしてる。
柔らかいしなんだかいつもいいにおいがする。
柔軟剤だったり、シャンプーだったり、晩御飯のおかずの匂いだったり、ソースの匂いだったりみかんの匂いだったり。
懐かしくていいにおい。
「うふふ、大丈夫だよー！」
「そう？泣かない？」
「だって櫻井くんお姉ちゃんに片思いだもん」
「あららー」
「櫻井くんかわいそう」
「……A、アイス食べる？」
「たべる！」
「ピノ買ってきてるよー」
「やった！」
おじいちゃんは夕刊を読んでいて、テレビでニュースが流れてる。いつもの光景。
「おじいちゃんも食べる？」
「じいちゃんはいらない」
「ん」
ゆっくりゆっくり癒やされる。
ここには私の居場所がある。
「おばあちゃん、ちっちゃい部屋行っていい？」
「いいよー、おばあちゃん晩御飯準備してるから行っといで」
「ありがと！」
アイスを食べ終えて、二階の物置小屋化してる奥の部屋に入る。
夏の間は使わない、こたつとかストーブが置いてあって、部屋の奥の開きのタンスの中に、ドールハウスが置いてある。
私はここをちっちゃい部屋、と呼んで時々お邪魔してる。
西洋のドールハウス。電気もちゃんとつく。
前に見たアニメの映画で、小人が憧れるドールハウスを見たとき、おばあちゃんちのと一緒だ！って興奮した。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 2594人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
はな(プロフ) - この作品でよしのさんと出会い最近も読み返し泣いて胸キュンして大好きな作品です！続編はないとの事、、戯言ですがもし、もしも気が向けば少しだけでも二人のその後の世界覗けたら嬉しかったり、、我儘言いましたが今年もよしのさんの作品読めるの幸せです！ (2020年8月31日 20時) (
レス) id: c8836e9fa0 (このIDを非表示/違反報告)
空。(プロフ) - 姉は居ないのですが、唯一頑張っていたバレエを高校受験を機に離れてしまって今自分には何ができるんだろうとか、もう自分の存在事態が嫌いって思うことが夢主と被りすぎてて涙止まりません。勝手ですがありがとうございます。 (2019年1月17日 22時) (レス) id: 1f83f5eb6f (このIDを非表示/違反報告)
しょー(プロフ) - 私も姉がなんでもできて比べられているので感情移入が半端ないです (2019年1月6日 15時) (レス) id: 0cc5b4bdf5 (このIDを非表示/違反報告)
バンビみん(プロフ) - 初めまして、いつも楽しく読ませていただいてます。毎回内容が設定など素敵でよしのさんの作品に引き込まれます。読むたびに胸がヒリヒリしながら読んでます。笑笑 これからも更新頑張ってください！ (2019年1月6日 2時) (レス) id: 2f337fdee2 (このIDを非表示/違反報告)
りんこ(プロフ) - 胸がギュッとなって、まとめて初めから読み直してまた泣いて。あーせつない。よしのさんのお話、今年も読めるのを楽しみにしてます。 (2019年1月4日 11時) (レス) id: ad777ddf20 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：よしの
| 作者ホームページ：
作成日時：2018年12月20日 17時
