〇≠無の証明Ⅳ－１ (ページ22)

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空っぽ(10/27) ページ22

空っぽ？どういうことだろう？誰もいないんだから当たり前なんじゃなくて？

私が不思議そうに松本さんを見ていたら、松本さんが私に気付いてやっと気を取り直す。

「あのさ、こういう人がたくさん集まる場所とか、昔人がたくさん集まっていた場所ってのは霊の吹き溜まりになってることがあってさ」
「霊の吹き溜まり」
「うん。学校、駅、病院とか。楽しいだけではない負の感情が起きやすい場所には残留思念のようなのが残ってたりする」

「そう。だから学校だとほんとすごいたくさんの色が混じり合ってるし、病院だとグレーと黒と濃紺とかだね、暗い色」
相葉さんもそう言った。

「へぇ……」
「なのにここには誰もいない、気配すらない」
「……」
「この感覚知ってるな……どこかで……」

松本さんが首を傾げて周りを見渡した。

「……とりあえず、中を確認しよう」
櫻井さんがそう言って、ほうきを持って蜘蛛の巣を払いながら歩く大野さんの後ろを歩く。

大野さんは何も言わない。
無言で歩きながら、ドアが閉まってる診察室なんかをバン！バン！と開けていく。

「埃……」

ケホケホ。
大野さんが咳をして、慌てて使い捨てのマスクを取り出して大野さんに手渡した。

「ありがと」
「大野さんは、何か感じます？」
「俺に聞いてんの？俺が何か感じるわけないでしょ」
「ほんとは何か感じ取ってるんじゃ……」
「A心読めんでしょ？読んでみたら？」
「……」

……埃すげー。これゴキブリとかいたらヤだな。あ、蜘蛛がいるから大丈夫か。

「蜘蛛」
「蜘蛛の気配しかしねー」
大野さんがマスクをつけながらアハハと笑った。

「Aいいの持ってる」
二宮さんが相葉さんの後ろにくっついてわたしをジトッと見てる。
「はいどうぞ」
「はいどうも」
「ありがとうは？」

「ありがとうAちゃん！」
相葉さんが抱きつきそうな勢いで私に向かって両手を広げた。素早く逃げる。

松本さんは、あ、俺持ってるわって顔でポケットから取り出してマスクを装着した。
子供用のやつじゃないと大きいんじゃないの？ってくらい顔が小さい。

「翔さん、はい」
「あ、ありがとう、スーツケースに入れてきちゃったからやべーって思ってた」
松本さんが櫻井さんにマスクを手渡して、笑いあってる。

前から思ってたけどこの二人が並ぶとキラキラ度がえげつない。眼力かな。

「……え？」
その時急に相葉さんが立ち止まって小さく首を傾げた。