〇≠無の証明Ⅳ－１ (ページ3)

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大野さんが、相葉さんの顔をちらっとみて、ふう、とため息を吐いた。

「依頼者」
「あー」
「ちょっと表沙汰にしたくないからって、名前は教えてくれないんだけど、ちょっと大物の……政治家の元大臣らしくて……」
「……」
「解決するまでかえれなさそう」

あああ、なるほど。
全員の心の声が聞こえた。

「出張ってこと？」
「うん。病院の近くのホテルに泊まって捜査する。しかもちょっと内密にというか」
「……内密？」
「公安の監視もある。もうすぐ京都の公安が来るから話聞こ」

思わずみんな黙り込む。
ここの留守番はどうするの。

「留守番は……？」
私の疑問を引き継いで櫻井さんが聞いてくれた。

「今回は花子さんにお願いする。花子さんが話聞いて急ぎだったら京都から誰かだけ帰ってきてまた京都に戻ってもらう感じ」
「全員で行くの？」

皆が顔を見合わせる。

「誰が欠けても困る」
大野さんが珍しく真剣に言った。

「つまり……それほど……」
「うん。危険。捜査してた公安は、大きな鎌とか鉈を持って追いかけて来た上半身裸の中年の男の霊のせいで階段から落ちたりした」
「中年の男？それはほんとに霊？」
櫻井さんが大野さんに聞く。

「もし上半身裸で大きな鎌とか鉈持った男が追いかけてきたら、霊でも人間でも、どっちにしても怖いでしょ」
松本さんが、形のいい顎を綺麗な手でさすりながらそう言った。

「形がいいとか綺麗な、とか形容詞いらなくね？」
櫻井さんがいきなり私の頭をパコンって叩いた。

「え！叩く普通？」
「ちょっとうるさいから静かに」
「あんたが私の心をいちいち読むからうるさいんでしょ！聞かないでよ！」
「聞こえてくるんだよ！そういう言う声はうるさいの」

心底うんざりされてる。
まあ、気持ちはわからなくもない。
あの女優さんを前見たときの櫻井さんのデレデレ具合ときたら！

「あれは！前からファンだったんだから仕方ねーだろ！」

「はい、ちょっとそこ静かに。Aもそろそろ松本くんの顔に慣れなさい」
「……へ？俺？濃い？」
松本さんが私を見て戸惑ってる。

「いえいえ！いつ見ても美しいなと！」
「何言ってんだバーカ」

んもう、恥ずかしい。
櫻井さんを睨んだら、真顔で大野さんを見てる。どうした？

……俺今、Aにうるさいって言ったけどAが誰に対して言ったかまでは言ってない筈なのに……？

ほんとだ。
しかも、松本くんの顔、ってハッキリ……。