〇≠無の証明Ⅳ－１ (ページ14)

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「失礼します」
「お待ちしてました」

中に入ると、昔イケメンだったんだろうな、という感じの俳優さんみたいなどっしりした感じの初老が立ち上がってソファを促した。

「院長の渡邊です」
「零課係長の大野と申します」

こういうときはスッと係長の顔になる大野さん。眠そうな顔がスッと切れ味を出してくるときカッコイイ。ずるい。

「中間さんの話はどこまでご存知ですか？」
大野さんがそう聞いた。

「えっと、それは……どちらの中間さんで？」
……河東くんが聞いてるからごまかしとこか。

という院長の心の声がした。

「横から失礼します、その件については後ほど。今回の件河東さんはご存知なかったようなのですが、このまま聞いていただいても？」

櫻井さんがさっさと牽制した。

「えっ」

河東さんが狼狽した。
知らん顔で聞いておこうと思ったのか。

「なにぶんデリケートなお話ですので、我々も人数を減らして先にホテルにチェックインしてもいいのですが」
「河東くんは悪いが席を外してくれ」

院長がそう言って河東がしぶしぶといった形で引き下がった。

「いや、人の口に戸はたてられんといいますからね、彼を信用してないわけではないんですけど、念には念を入れてます」
そう言って院長はふー、とため息を吐いた。

「風評被害にはそれが賢明ですね」
「ホテルに泊まられるご予定なんですね？」
「ああ、そうです。この病院の坂をおりてすぐのホテルです」
「遠いとこから遥々ほんま申し訳ありません」
「いえいえ、我々は上からの命令で動いているだけです」
「……兄のことでしょうねぇ」
「失礼ですが……お名前から察するに……お兄様は元法務大臣の……」
「はい、そうです」
「なるほど符合しました。これ以上詮索は致しません、大変失礼しました」

櫻井さんが大きく二回頷いた。
管轄を超えての異例とも言える妙な捜査はそういうことね。

「では……」
ソファに座った櫻井さんが資料を開いて、その横で二宮さんがタブレットを手にする。
大野さんは少し迷って院長の横に座る。

私と相葉さんと松本さんの席がない。

「すみません、少し確認したいことがありますので僕は席を外してもいいですか？」
松本さんがそう言った。
櫻井さんがうん、と頷く。

「では東城も。相葉はこっちへ」
相葉さんも近くにあったパイプ椅子に座る。

「ではすぐ戻ります」
「宜しく」

大野さんが私達を見た。
一礼して松本さんと部屋を出る。