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バイト先に向かうと、本屋さんの従業員出入り口の近くで佐藤くんが寒そうに立っていた。
「あ、佐藤くん！」
ああ、なんてこと。
潤くんが声をかける。
「……あ」
佐藤くんの残念そうな顔を見て胸がキリリと痛んだ。
車から降りて佐藤くんの方に駆け寄る。
潤くんが駐車場に車を停めるのを見て、急いで佐藤くんに声をかけた。
「ごめんね、佐藤くん、待った？」
「ううん、どうせここに来る予定があったから……で、どうした？」
「佐藤くんに、バレンタインのお菓子焼いたから渡したかったんだ……」
「わ！いいの？ありがとう！」
「少し話もしたかったの」
「ん？どうした？」
佐藤くんが不思議そうに私を見る。
「佐藤くん、あのね……」
「うん」
「……私ホントは、佐藤くんの彼女になったら幸せかなって思ったの……癒やされるし楽しいし、私らしくいられるし」
「……え、マジ？」
「……でも、駄目みたい」
「え？どうして？」
「ね、私変なの。潤くんのこと大好きだし彼女になりたいって思ってたけど、怖くて……」
「どう怖いの？」
「わかんない……でも、もし私が裏切ったら、多分……」
潤くんが無表情で白い薔薇の花びらを首から千切ったあの姿が脳裏に浮かぶ。
「あの薔薇が私ならいいの、もしあれが、潤くんだったらどうしよう」
「え？」
「潤くんが壊れちゃったらどうしよう」
「Aちゃん？」
「……」
「どういうこと？Aちゃん？」
佐藤くんが困った顔をして私を見て、はっと目を上げた。
「こんにちは！お久しぶりです」
「こんにちは」
潤くんの声が背後から聞こえた。
「今義理チョコ貰いました！ほしい本があって予約してて。バレンタインが発売日だったせいでAちゃんに気を使わせちゃいました」
佐藤くんがさり気なく義理、ってことを強調した。空気読んでくれた。ホッと息を吐く。
「じゃ、失礼します」
佐藤くんが潤くんに頭を下げる。
「明後日の合格発表、結果わかったら連絡するね」
「うん、待ってる」
「じゃあね！」
佐藤くんが手を振って私達に背を向けた。
「なんだ、待ち合わせってそういうこと」
潤くんが佐藤くんに手を振りながら私にそう言った。
「……うん」
「……じゃ、また9時過ぎ、迎えに来るよ、頑張れ」
潤くんが頭をぽんと叩いた。
「ん、ありがと！行ってきます！」
無邪気に手を振りつつ、寒さだけじゃない、指先の震えが止まらない。
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りるまめ(プロフ) - 限りある時間を割いて読むのが私の至福のひとときです♪いつも素敵なお話ありがとうございます。 (2018年8月20日 0時) (
レス) id: ac8bd37eaf (このIDを非表示/違反報告)
橘花(プロフ) - スーちゃんどうしたのかなってぞわぞわしますね！きっと鳥籠にいるのを見て放してあげたんだろうけど、心境が切ない。。踊るっきゃねーな！ていいですね！とりあえずくるくる回ってみようかな！彼の守護女神様にぜひばちっと結界をお願いしたいです！！！ (2018年8月15日 23時) (レス) id: 2798c105f2 (このIDを非表示/違反報告)
キミ(プロフ) - いつもワクワクして拝読しております。そしてモゾモゾしちゃうほどに続きが絶妙に気になる終わらせ方で楽しませていただいております。お誕生日までの完結 楽しみにしてます！ (2018年8月15日 20時) (レス) id: 18136aec67 (このIDを非表示/違反報告)
にゃん(プロフ) - 大切で大切で他人に触れさせたくない、大事な女の子。自分ですら許せない…愛情を拗らせちゃった潤君がいとおしい。 (2018年8月11日 14時) (レス) id: aab6d8833f (このIDを非表示/違反報告)
ゆき - はじめまして！！実はかなり前からよしのさんのことを知っておりました。私はよしのさんの小説が大好きです。最初はよしのさんの小説で翔くんを好きになりました。今は潤くんに夢中です。よしのさんのお陰で私は今笑ってられています。ほんとにありがとうございます。 (2018年8月8日 0時) (レス) id: 9f20bed09a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：よしの
| 作者ホームページ：
作成日時：2018年7月14日 10時
