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「さよなら」
櫻井くんに頭を下げて走り出す。
やっぱりダメだ。二宮くん以外はちょっと無理だ。
家に帰って、お風呂に入って、ネイルをやり直しながら明日の服装を考えてたら、結構早めの時間に二宮くんからラインが来た。
『11時半に風山駅で待ってる』
すぐにラインを既読をつけちゃった。
待ってたみたいじゃない。
恥ずかし。
『ちょうどスマホ見てました。了解です』
なんて、いいわけ。
『今、ちょっと抜け出して
トイレでラインしてる』
ふふ。
どうして。
おかしい。
『まだまだ夜はこれからって感じ？』
『うん。帰してくれない』
なんか泣いてるみたいなスタンプ。
『そっか、でも好きな人と
一緒だし楽しいでしょ？』
すぐ既読になる。
『楽しいけどAとの方が楽しい』
返事はやー！
それに。私のほうが楽しいの？
どうしよ、嬉しいよ。
『それは自分に嘘つかなくていいからだね』
ぽちぽち。
送信を押したらすぐ既読。
『あ！戻らなきゃ！見つかった』
おかしい。可愛い。
『じゃあ、気をつけてね！
また明日、おやすみ』
『うん、痴漢には気をつける。おやすみ！』
なんか変なスタンプ。
私も、おやすみ、って書いてるスタンプ押したら、やっぱりすぐ既読になった。
ふと鏡の自分と目があった。
私、無意識に微笑んでたみたい。
明日、二宮くんと、一日一緒にいられる。
そう思うだけで、なんだか嬉しくて、ベッドの抱き枕をギューって抱っこした。
朝、目が覚めたら、あいにくの雨。
白いワンピとサンダルにしようと思ってたけどこれじゃダメだ。
少し肌寒い。
白いシャツと、デニムのスカートと、黄色いロングカーデという、考えてた格好と全然違う服で家を出ることにした。
一見レインブーツに見えない靴を履いて、しょんぼり歩く。
雨、やだな。
駅について、傘を閉じて、傘が作る小さな水たまりを傘の先で引っ掻いて、ハートの形をいくつも書いてたら、二宮くんが来た。
長袖のTシャツを萌え袖にして、ダボッとしたダメージジーンズ履いて、殆ど手ぶらみたいな格好で来た。こんなカジュアルなかっこ見たのはじめてでドキッとした。
「おはよ」
「え、傘は？」
「破けてるから駅に寄付してきた」
「破けてるのに？」
「大丈夫、前半分は濡れないよ」
二宮くんが笑って何気なくわたしの足元に目を落とした。
「Aのハートいっぱい落ちてる」
「あ」
なんだか気まずくて慌てて水たまりを傘の先で消す。
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作者名：よしの
| 作者ホームページ：
作成日時：2017年6月17日 4時
