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何もしていないのにむかつくとは。
今の私なら「何言ってんのよ」とでも言い返せるけど、当時の私は見た目も中身も女の子女の子していたから、ひどい。それしか言えなかった。
先生に言っても、ああ、そっか。先生も注意しとくからな。とか言って、にやにやしながらそいつに、『木下ダメだぞ、渡瀬さんに嫌われるぞ』的なことを言うだけ。
嫌われる？え？もうすでに、大っ嫌いなのに！
木下も、えー、はーい、Aごめん、とか謝ってきたけど。
しばらくしたら、また先生が板書してるときとかを見計らって、消しゴムを小さくむしっては、私に投げてきたりした。
我慢。
泣くのを我慢してたら、そいつの友達の大川も、同じように小さい紙きれを丸めては投げてきた。
思い切って睨んだら、目が赤い、うさぎだ、うさぎ。そう言ってきた。
やめなよ男子。
注意してくれる子もいたけど、奴らは年々、ちょっとやんちゃで目立つような存在になっていって、みんな何も言わなくなっていく。
そんないやがらせが、中一の夏休みあたりくらいまで続いた。
夏休み明け。
今度はすれ違う時に睨まれるようになった。
大川は髪ちょっと茶色くしたり、木下はシャツのボタンを多めに開けたりバカみたい。
何故か、彼らが急にモテるようになったことも困惑した原因のひとつ。
あんなに、性格悪いのに!!!!
木下と廊下ですれ違う時に、通路を邪魔されたりした。
「……通して」
「なあ、A」
「下の名前で呼ばないでよ」
「渡瀬」
「何か用？」
「別に……」
あああ、いやだ。声を聞いたら、鳥肌が立つ。
あの虫とか、給食の時の吐き気とか、小さいものを延々投げつけられる不快感とかがよみがえって鳥肌と寒気が止まらない。
木下と大川は、目立つ子のグループの一員になっていつも団体で廊下に座ったりしていた。
そして恐ろしいことに、そいつらはイケメン軍団と後輩が憧れる御一行様になったのである。
木下は、茶色い目をうるうるさせていつもちょっと拗ねたみたいに口をとがらせて、じいっと私を見てきた。
気持ち悪いよ、怖いよ、ヤだよ、見ないでよ。
大川は、明るくて元気がよくて、皆からも人気者。
なのに、私をからかう。A！こっち見てー！ほらほら！木下呼んでるよー！なんて。
木下は呼んでねーよ！とか怒ってる。
それをからかう仲間たち。ああ最悪。
木下は、仕方なく振り返った私を見て、お前なんか嫌い、と言った。
それは！私の台詞！
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作者名：よしの
| 作者ホームページ：
作成日時：2017年6月17日 4時
