る ページ38
風船のインフレーターを風船お姉さんと化してる先輩に押し付けて、特設ステージに慌てて向かう。
あ、始まった！
こないだ、二宮くんが口ずさんでたメロディ。
………。
社員旅行のとき、私頭が痛くて外に出てたから知らなかったけど。
二宮くんってべらぼうに歌がうまいんだ。
知らなかった。
めちゃくちゃ格好いいし可愛い。
「……」
二宮くんが歌いながら、取引先さんありがとう、ご近所さんお世話になってます、みたいに言って、……まって？あの後ろで可愛く踊ってる人たちはまさか。
キリンさんは相葉さんだよね！
二宮くんが私を見つけた。
にこ、と笑った。
失神したい。
木下の時は、吐き気しかなかったのに、二宮くんは可愛くてやっぱり吐きそうだ。
歌が終わって、社長や取引先さんにマイクを向けて話を促した。
町内会長さんにも話を伺って軽く突っ込みながら話を展開していく二宮くん独特な司会で場を盛り上げてる。
「しゃちょー！会いたかったですー！僕の顔覚えて行ってね、そしてお仕事待ってます」
「あらー可愛いお嬢ちゃん。ほら、パパにおねだりしてよ、ビル買って？って」
とか言いながら軽快に会社のPRまでやり遂げて。高校生のダンスの子も、子供連れの親も、近所の覗きに来た人も、皆ニコニコしてる。
「可愛いひとだね」
「イケメンだねー」
なんて言われてる。
「でもね、20歳までの顔は自然の贈り物って言うけど、それ以降はその人の歴史が顔に出るんだよ、いつも笑顔の人は優しい顔に、いつも怒ってる人は怖い顔になるんだよ」
そう言ってる人の声が後ろから聞こえた。
「内面が滲みでるんだよね、年々可愛くなる人は普段から心も可愛いんだよ、だからあの人はきっと可愛い人なんだろうね」
そうだ。
そうだよね。
人を見た目で判断してはいけないけど。
そういうことなんだ。
可愛い、とかかっこいい、とか綺麗だ、とか。
自分の直感は、きっと正しい。
表情にその人の生き様が浮かび上がる。
ならきっと。
二宮くんは。
イベントが、終わった。
あとは、イベント会社の人に任せて、会社の人間がやることほぼ終わり。
取引先さんも、二宮くんの歌とか司会を見たあと、笑いながら帰っていった。
「お疲れ様でした」
「あっちぃ」
そう言いながらアライグマの中から出てきた顔は松本さん。着ぐるみいらなかったと思う。そのままのほうが絶対キャーって言われたと思う。
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作者名：よしの
| 作者ホームページ：
作成日時：2017年6月17日 4時
