可 ページ32
ね、これって私フラれたんだよね？
でもね、仕方ないのよ。
さんざん、人を勝手に分類してそれをひと括りにして嫌ってた私に罰が当たったのよ。
泣く権利なんてない。
会社の近くまで来た時、櫻井くんとバッタリ遭遇した。
「お！渡瀬さんおはよう」
「おはよ」
「ニノとデートどうだった？土曜一緒に本棚見に行くとか聞いたけど？」
「……行かなかった……」
「その感じ……そっか……」
櫻井くんがはー、とため息を吐いた。
「俺らが茶化したせいだったら俺ニノに土下座しなきゃ」
「……ん？」
「ほら、金曜の夜同期で飯行くってなってたじゃん。あのときさ、俺が茶化したらニノがマジでやめてあげてって言ってた」
「……うん」
「今すごくデリケートで大切な時だから余計なこと言って壊さないで！って後で言っててね、悪いことしたなーって」
「……」
「失敗できない、計算して距離はかってる、とか言ってた」
「……そんな……」
「あんなに真剣に頑張ってたのにダメだったとしたら渡瀬さんが振ったんだよね？俺のせいかなぁ……」
櫻井くんが眉を八の字にして、口尖らせて頭をポリポリした。
「ニノはいい奴だよ……」
「知ってる」
「好きになれない？」
「大好きなんだけど……」
「けど？」
「ごめんなさい」
櫻井くんに頭を下げて会社の中に早足で入っていく。
振り返ったら、櫻井くんがちょっと悲しそうな顔で私を見てて、自分の自己嫌悪に拍車をかける。
そんな風に大切に壊れないように扱ってくれてたのに、私はなんてことをしちゃったんだろう。
営業部に入ると、みんなが着ぐるみを持ってワーワーやっていた。
「相葉くんはキリンね」
「了解、斗真は？」
「この訳のわかんないアライグマ」
「俺は？」
「風間はカッパだよ」
「え、やだ！俺それならライオン？ん？こいつがいい」
「これは俺のー」
「きみちゃん着てみて！」
もしかして今週末のイベントの？
うちの会社の創立50周年記念パーティの出し物かな？各部署から色々やることになってる。
だけどこれ確か社員旅行でも同期のメンバーでやってた気が。
「またこれやるの？」
「うん、俺が歌うんだけど……」
澤部くんが困った顔してる。
「今週時間見つけて練習するよー」
ふと相葉くんと目があった。
「Aちゃん、当日着替え手伝ってね」
「うん」
「ニノがごめんね」
謝るのは私の方だ。
その日から、二宮くんと会えないまま。
一週間が、過ぎた。
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作者名：よしの
| 作者ホームページ：
作成日時：2017年6月17日 4時
