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「……ん？何？」
「いや、何か可愛いなって思って」
「……何急に！」
慌てる。
大慌て。
何を言い出すんだ。
そんなことよりここで見つかったら……
いやいや、見つかっても別にいいじゃないか！
なぜ私達のほうがコソコソしなきゃならないの！
涼ちゃんと優奈ちゃんが通り過ぎていく気配を視界の隅に捉える。
笑いあってる。
……何笑いあってるのよ。
取引先との付き合いは？
高校の時のお友達はどうなったの！
私達に嘘ついてまでデートしたかった理由は？
好きなんだったら私とちゃんと別れてから付き合いなさいよ。
二股なんて最低だ。
恋人がいるのに他の人に心を移すなんて……
私より優奈ちゃんの方が良くなったのかな。
私のどこが悪かったの。
優奈ちゃんなんかのどこがいいのよ。
許せない。
好きだからやっぱり許せない。
涼ちゃんをとらないで！涼ちゃんも優奈ちゃんなんかのどこがいいのよ、目くりぬいて洗ってやろうか？とか言いたい。
目の前で死んでやるって切腹してやろうか。
いやだ！
取らないでよ！
私の涼ちゃんだよ？
いやだ。
あの笑顔は！私のものなの！
わなわな震える手を握りしめて棒立ちになる。
私に嘘ついてまで会ってることとか、罪悪感も何もないような笑顔を見たせいで、突然裏切りに対する怒りが沸き起こる。
「A、怖い顔……」
「え……」
二宮くんが私の顔を覗き込んだ。
「A」
「……ごめん、つい、怒りが込み上げて」
「うん、……うん」
二宮くんがまた私のほっぺをぷに、と摘んだ。
「やめてよ……」
「うん」
「やめてよ……やだよ。私の涼ちゃんだよ……」
「そうだよ。……うん」
「……胸貸して……」
「ん」
二宮くんが私の腕をぐいっと引っ張って私をぎゅうっと抱きしめた。
「浮気かどうか、ちゃんと確認するんでしょ……？」
「……うん」
「もしかしたらさ、相談乗ってあげてるだけで、何にもないかもしれないでしょ？」
「……でもキスしようとしてたんでしょ？」
「キスなんて接触事故だってば」
「抱き合ってたんでしょ？」
「今の俺らみたいにね」
二宮くんが頭をわしわしと撫でた。
「行こう、確認して、そこから今後どうするか考えよう」
二宮くんが痛くてたまらないみたいな顔で私を見下ろして、少し笑う。
伸ばされた手を掴んで、また、歩き出す。
「どっち行ったかな……」
「涼ちゃんなら、あっち」
繁華街とは反対を指差す。
二宮くんがそっちに足を向けた。
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作者名：よしの
| 作者ホームページ：
作成日時：2017年3月31日 8時
