いつも君を見てる２[A]完結 (ページ5)

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「なんすか？」
「あのさ、もしうちの、この人、ストーカーされてる、って聞いたらどう思う？」
「ちょっと二宮さん！」
「あー……」

中華屋さんのお兄さんが困った顔をした。

「ん？」
「すみません……」
「え？」
「俺のせいかもしんないっす」

どういうこと。
思わずお兄さんの顔をじっと見る。
いきなり帽子をはずして、すみません！って私に謝った。

「なに！」
「俺、出前でいろんなとこに運んでるんですけど」
「……」
「ここのお姉さん、すっげ可愛いってみんなに言いふらしてました！すみません！」
「……」
「例えば、裏の商店街の人とかに……彼女いないの？とか聞かれたら、俺、山風ビルの10階のお姉さんみたいな人がいいっていつも言ってて……」

唖然。
返事に困って立ちすくむ。

「どさくさに紛れて告白されてやんの」
菅田くんがニヤニヤ笑った。

「君この人の後つけたりした？」
「そんなことしません、お名前も知らないんですよ！」
「ああ、うちの会社の看板娘の名前、知りたいの？」
二宮さんがとびっきり可愛い笑顔でお兄さんに聞いた。

「教えてくれるんすか……」
「内緒だよ、え・り・子！えり子さんね」
「あ、えり子さん」

私の方を見て名前を呼ばれた。
「えり子さんは、お休みです……」
「ああ、つまんない、お前つまんねーわ！」
二宮さんがぶーたれた。

「えり子宛に花束渡してこのお兄さんのほっぺにチューするえり子見たかったのに！」
「悪趣味ですよ……」
「えり子さんじゃないんですか……そうですか……名前も教えてもらえない、ってことは……そういうことですね……」
「……えっと……また注文するね！」
「ありがとうございました……」
「あ、待って！会計会計！」
「ああ、はい……」

しょんぼりしてる。
すごすごと引き下がる中華北京のお兄さんの背中をみて、二宮さんを睨んだ。
「もお……」
「あいつ、お前に気があるな、ってのは前から気づいてたよ」
「……ええ！」
「あと、佐山さんとシロネコさんと福川運送のお兄さんも潰しとかなきゃね」

がっくり。力が抜けた。

「Aはニコニコ愛想よくて目もじいっと見て嬉しそうに話しかけるしさ。そんな女って可愛くなくてもモテるよね」
「可愛くなくてもっていいましたね」
「いいましたよ、さ、食お食お」

皆がデスクの横に置いてある会議用の大きいテーブルに移動して食べ始めた。
私。全然知らなかった。
なんにも気づいてなかった。