いつも君を見てる２[A]完結 (ページ36)

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「しらな……」
「怖いよね、Aちゃん誰にでも優しくて親切でニコニコしてて……気をつけてね」
「……」
「もう閉じ込めておきたいくらいだよ……」

目の前がぐらりと傾いた。
慌てて床に手をつく。

「これでもう隠し事は何にもないよ、すっきりした」
「昨日の……二宮さんの……あの……」
「ああ、あの子は俺の顧客さんだった子で、ストーカーに遭って、怖い目にあって……俺巻き込んでごめんね、って謝られたよー」
「……」
「あの時ね、ホントいっぱい怖いことあったんだよね、帰るなりおかえり、電気消したらお休み、当時の彼女と歩いてるとこ写真に撮られたりね、ほんと犯人も誰かわかんなくて」

雅紀くんが、冷蔵庫からビールを取り出した。

ダボッとしたTシャツに、くっきりとした肩甲骨が浮かんでる。
愛おしい後頭部と、綺麗なうなじ。

くるん、と振り返ったらサラッと髪が揺れた。
私を見下ろして、優しく微笑んだ。

「あの時ね、怖いことがあるといつも助けてくれたんだよね、翔ちゃん」
「……」
「俺女だったら絶対惚れてたよね、だって俺、ほんと大好きなんだよ翔ちゃんのこと！」
「……」
「もっと好きになったよ、ほんとー！」

雅紀くんがきゃはーって楽しそうに笑う。

ね、雅紀くん？
いつから？

いつからこうなること、計算してた？

不意に思い出す。
『ほんとに欲しいなら、ちゃんと向こうから来てもらえるように努力するべきだよね』
『あとは……罠を仕掛けるとかね』

雅紀くんの、言葉を。
櫻井さんが居たからスルーしちゃったけど、あれは、もしかしたら。

……私のことを？
この執着は何。

「雅紀くん、私も、雅紀くんのことが好きだよ……？」
「ほんと？嬉しい」
「……」
「ずっと一緒にいようね」
「……ん」
「ずっとね？浮気しちゃダメだよA」

ぐらりと、目の前が、揺れた。
この愛情を裏切ったらきっと。

雅紀くんが壊れるのを想像して、背中がぞわりと粟立った。

私が二宮さんのことを好きかもしれないっていう疑惑だけで、彼の笑顔を壊してきた。
何度も見たわ。
私が、他の男の人のことを話すだけで？
いつも笑顔が剥がれ落ちた。

パタパタと今までの雅紀くんの言葉が蘇る。

『俺の気持ち、もう止めなくていい？』
『俺の愛重くて壊れない？』
『死ぬほど愛してもいい？』

……ああ、それは。
こういうことだったんだ。

「Aちゃん、おいでよ」
「うん」

甘い罠の胸の中に。
それとわかって飛び込んだ。