いつも君を見てる２[A]完結 (ページ35)

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チッチッチッチッ。
時計の針の音を聞きながら、雅紀くんの帰りを待つ。

聞かなきゃ。
ちゃんと聞かなきゃ。

「ただいまぁ」

雅紀くんが帰ってきて、私を見て微笑んだ。
この笑顔に裏があるなんて誰が信じるというの。

「おかえりなさい」
「……どうしたの？怖い顔」

ほらね、すぐに気づくの。
私の体調が悪い時も、腹を立ててても、仕事で失敗して落ち込んでても、すぐに気づいて抱き寄せて大丈夫だよって。

「プリン買って帰るの忘れてたでしょ！おーちゃんがAさん忘れてたよーって教えてくれてー」
「おーちゃん？」
「大野くん！」

指先が冷たく感じる。
逃げ道はどんどん塞がれていく。
逃げたいわけじゃないけど。
それが今はとてつもなく怖い。

「聞きたいことがあって」
「んー？」
「雅紀くんが、犯人だったんだね」

雅紀くんがジャケットを脱いだ。
一瞬目を丸くして、私を見て、あは、って笑った。

「犯人って言い方やだなぁ」
「……」
「隠すつもりなんてなかったけどなかなかバレないから不思議だなぁって思ってたけど」
「どうして……？」
「あ、でもまって？俺は何にもしてないよ？山本くんを気持ちよくしてあげただけ！」
「……」
「俺の言葉を真に受けちゃった山本くんがダメなんだよ、あんなのよいしょに決まってんじゃん、ね？」

膝の力が抜けて、へなへなとしゃがみこむ。

「それを真に受けた山本って人が悪いってこと？」
「うん、でしょ？勘違いしてるのを否定しなかっただけで調子乗っちゃうんだもん、思い込み激しい奴って怖いよね？」
「でもそれを知ってて勘違いを正さなかったんでしょう？」
「……」
「私がどれほど怖かったかわかってるの、雅紀くん」
「だからひどいことにならないようにいつも傍にいてちゃんと守ったでしょ？責任感じてたんだって俺も」
「……」
「まさか怪我させるなんて思わないよ！好きなら守りたいでしょ？」
「……」
「山本くんは俺のいない日Aちゃんを守ってくれてると思ったから！見守ってくれてると思ってたからそのままにしてたのに」
「……」
「だってね、警察は役に立たないの、事件になってなかったら動けないっていうんだもん。Aちゃん気づいてないでしょ、今年の春、中年のおじさんにつけられてたって」

……え？
なにそれ。

ねぇ、なにそれ。

「会社の前で張ってた男を山本が警備の格好で追い払ったからいなくなったけどね？」

雅紀くんがニッコリ笑った。