74 ページ34
オフィスについたらえり子さんがいなかった。
「まーたえり子がいない！」
二宮さんがいい声で叫んだ。
「今日は福岡」
沢村さんがちょっと笑いながら言う。
「何しに！」
「急に街並みを見たくなったんだそうだ」
「うそだ！」
「嘘だろうねぇ」
「……コーヒーのも……」
「あ、おれも」
「淹れますよ、待って」
マフラーをほどきながらちょっと笑う。
コーヒーを片手に仕事を片付けてたらあっという間にお昼の時間になった。
「俺豚骨ラーメンの気分」
菅田くんが言った。
「俺も、半チャーハンも」
「俺は味噌ラーメン」
「はーい」
中華北京さんだ。
ずっと注文してなかったから、あのあとから久々に会うことになる。
しばらくして、中華北京さん通しますねって警備から電話があって中に入ってきた。
「お久しぶりです！」
「お久しぶりですね。ありがとう。ね、もしかして雅紀くんが竜ちゃんって呼んでる方ですか？」
「あ、そうです、んもー、相葉くん酷いなぁ、自分だけ美味しいとこ掻っ攫っちゃってー」
そう言いながら岡持ちの中からラーメンを取り出す。
「美味しいとこ？ふふ」
「あんだけ山本を煽っておきながら自分が奪っちゃうんだもんなー」
「え？」
「だからー、山本をね、あの子山本に気があるんじゃない？あんな笑顔で挨拶されていいなぁとかー」
血の気が引いた。
「え？」
「メールアドレスゲットしたーとか言ったら、メール送ってみなよ！おかえりってメールしたら？って教えてあげたり」
「……」
「他の男と帰ってるみたいだけどあいつ何者かな？同じ職場のやつ？とか聞いて様子見させたり山本を使っておきながらー」
「……えぇ？」
「協力してるフリして自分がお姉さんをゲットしちゃうんだもんな！ラブラブで羨ましいっすよ！俺も彼女欲しい！」
お金を払って、毎度！お幸せに！って帰っていく竜ちゃんを見送る。
訳のわからなかったたくさんのパズルが、カタカタ、と音を立ててあるべきところにハマった気がした。
協力するフリして、山本を煽って、私のストーカーに仕立て上げた？
そして、それを守るフリして？
「A！ラーメン伸びるから先食うよ！」
二宮さんの声がした。
振り返る。
「二宮さん……」
「ん？」
「雅紀くんだった……」
「でも、好きなんでしょ？馬鹿なこと言ってないで早く食って仕事しなさいよ！」
でも好き。
……そうなんだ、だけど、好きなんだ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 2794人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：よしの
| 作者ホームページ：
作成日時：2016年12月31日 12時
