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「あれ、見られてる可能性、全然考えてないよね？危ないからやめてね」
「え？え？」
「あれ、盗まれてたの気づいてないでしょ？」
「……」
「ああいうの出したいなら、捨てアドとかにしなね？危ないよ？」
ぞっとした。
良かったら応募していってくださいね、って言われて何も考えずに応募してた私。
「俺が個人情報盗まれたのもそういうのだったよ、前は普通のアパートに住んでたんだけどね、家の前に張られたりして面倒だった」
呆気にとられたまま声が出ない。
「そういう経緯があって、俺も引っ越し考えてて……ダメ元でAちゃんと同じマンション聞いてみたら同じ階に一軒空いてるよって」
「……」
「そこからは知っての通り。Aちゃんと知り合えた、やっと、Aちゃんが俺を見た、やっとだよ、半年以上かかった」
雅紀くんがあはは、って笑って冷蔵庫からビールを取り出した。
「飲む？」
「飲む、飲まなきゃ聞いてらんない」
「怖い？」
「怖いよ！」
雅紀くんが、フフ、って笑う。
「怪我に響くから一本だけね」
「……はい」
ほら、優しいの。
怖いのに。この包容力に甘えたくなるのよ。
「山本くんがどんどんエスカレートするのを、止められなかった」
「……」
「ストーカーみたいだな、って気づいて山本くんの後をつけたりした。Aちゃんじゃなくて、俺が山本くんのストーカー状態」
雅紀くんが、フーっと天を仰ぐ。
「……どういうわけか、山本くんは、Aちゃんが自分のことを、好きなんだと思うようになったみたいで」
「どうして？」
「いつも嬉しそうに話しかけてくれるからだって」
「そんな……」
「竜ちゃんもそれを言うなら俺のことも好きだよ！って言い合いっこしてたよ？」
がっくり。
「気をつける……」
「……だね」
うなだれた私に、雅紀くんが頭をふんわり抱っこしてくれた。
「でもそこがいいとこだしなぁ」
雅紀くんが私を覗き込むみたいに見上げて、口角にキスをした。
「……」
「ほら、笑って」
「うーん……」
「疑問は晴れた？」
「うん……でもさっきの、騙したな、ってのは」
「……よくわかんない、片思い仲間だと思われてたのかな」
雅紀くんがキラキラの笑顔で私を抱き寄せる。
その笑顔を見て、何だかもう、色んなことがどうでも良くなった。
「嫌いになった？」
「ううん、そんな前から守ってくれててありがとう」
「よかったぁ」
雅紀くんが嬉しそうに私をぎゅうっと抱きしめた。
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作者名：よしの
| 作者ホームページ：
作成日時：2016年12月31日 12時
