〇≠無の証明Ⅲ (ページ40)

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「あのさ」

大野さんがいきなり話しかけてきてびっくりした。

「じゃあ、燃える手、ってロイ？」
「多分そう。アンナが死の直前に見たのは、ロイの燃える手だったんだもの」
「燃える手は、紫音くんに、くっついて来た……」
松本さんがうなった。

「……」
「紫音くんの背中の手の痕、消えてたよね、さっきも見たけど」
大野さんが紫音くんをちらっと見て言う。

「A、まさかお前、ついてない？」
「え！やだ！見て！」
「いいのお？」
大野さんが目を丸くした。
「大野さんならいい！他の人はやだ！大野さん見て！」
「おれやだよ」

は、は、は、とか笑ってる。
「鏡で見る……？怖いよ！」
「一人になるなって」
松本さんが慌てて言った。

こんこん。失礼しまーす、って言いながら二宮さんが来た。
「話し声聞こえたから来たよ」
「ああ、ニノ」

ちょうど私がシャツを肩からずらして、ブラのひもを下げて、みえるかな？ってやってるときに入ってきて、イラっとした。

「何、このタイミングなに！わざと？」
「……はあ？お前、今からストリップはじめんの？俺見たくないよ！」
「出ていけ！」
「でもほら、何かあったらいけないから監視はしとかなきゃ、ああヤダヤダ」
「……」
「脱ぐの？やだけど手伝うよ！仕方ないなあ……あれ」

二宮さんが私を見て止まった。

「……なんで？」
「何？」
「大野さんいるのに何で？」

松本さんがガタン、って立ち上がった。
「臨兵闘者皆陣列在前！」
二宮さんが横に四本、縦に五本の線を描き、手刀を切った。

「潤くんどうなった？」
「散らしただけ、精々、触ろうと思ったら熱かった、くらいの程度だ、ダメージない」
「まって結界張る、A俺からはなれちゃだめよ、俺の周りしか無理だからね」
「……」
「とりあえず、相手からこの部屋を見えなくする、塩……あと霊符書く、紙……」

二宮さんが私を大野さんにくっつけて、部屋を飛び出した。

「こんな手ごわいの今回初めてかも」
「俺、なんも感じない」
大野さんがきょとんとして言った。

「見える？」
「見えない」
「この黒い煙みたいなの、見えない？」
「……何？」

大野さんが手を上げた。
ぴん、と空気が震えた。

「こらー！結界やぶるなあああ！」
二宮さんが部屋に飛び込んで、また眉間に皺を寄せて、集中した。

「ごめん」
ははは、とか笑ってる。

「結界破ったけど、黒い煙も消えた」

松本さんが苦笑いした。