〇≠無の証明Ⅲ (ページ14)

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「嘘だ」

二宮さんが慌てて否定した。

「ありません、認めません！」
櫻井さんが声を張る。

まあ、わかる。
私だって自分にこんな力があると思われたくない。
「ほら、Aも同じこと思ってる」

余計な事言ったら力があるって証明になるんじゃないの？
あれ？櫻井さんって賢いのにもしかして馬鹿なのかしら。

「はあ？なんだとお前」

どんどんボロ出てるわよ？
紫音くんからみたら何も話してない私に爆裂に独り言言ってる変なやつなってるわよ！

「あ、そっか」

やっと気づいたの？

「お前なんで何も言わないんだよ」

認めるのが嫌だからよ！

「きたねえ！」

汚くないです。
櫻井さんが一人で自爆してるのに巻き込まないでくれるかな。

「自爆ってなんだよ、はあ？」
「だから巻き込むなって言ってんだけど」
「きたねえ」

「というわけで、この二人はテレバスね、テレパス同士だから、お互いの気持ちが声に聞こえるみたいに聞こえてるみたいね」
二宮さんがざっくりと私たちの関係を説明した。

「他の人のは目を合わせて集中しないと聞こえない」
櫻井さんがとうとう自分で言った。

「はあ……」
「『そんなことがあるの？困るなあ、変な事考えらんないじゃん』って思ってるだろうけど」
「……」
「基本的に嘘ついてるかどうかを見分けるレベルでしか使わないのでご心配なく」
「私のは勝手に読んでるのに？」
「お前も勝手に読むからだろ」

ぎりぎりぎり。
お互いに牽制しあってるのを見て紫音くんがポカーンとした。

「どっちかが片思いとかしたら大変ですね」
「誰がこんな奴と」
櫻井さんが素早くそう言った。

「櫻井さん、紫音くんは、別に私があんたを、あんたが私を、って言ってるわけではなく、例えば私が大野さんを好きになったらってこと言ってんの」
思わず訂正した。

「……と、ごらんのとおり、俺はいちいち心を読んでるわけではないということがおわかりいただけたようだね」
取り繕ってる。転んでもただでは起きない人だ、こういうとこちょっとイラつく。

「……」
「しかしこいつは違う、勝手に読むから気をつけろ！」
イラつく、っての聞こえたんだ、睨まれた。

なんだと？
「なんだよ？」

……Aさん、素敵なのに櫻井さんって変なの。

紫音くんの心の声。

「…………は？」
櫻井さんが紫音くんを、じいいっと見た。

「君、変なものが見えるって言ってたよね？目は大丈夫？」
「おいこら」

思わずお尻をばしん！と叩いた。