〇≠無の証明Ⅲ (ページ13)

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「ああ、でも、ちょっと肩こってるかな、肩にグレーの影が見える」
「グレーの影……」
紫音くんが真剣な顔で聞いてる。

「残留思念っていうのかな、その場所や人に強い感情を残して死んじゃった人の残り香みたいなね、影が残ってたりする。人の悪意なんかも光で見えてんの」
「……」
「こないだね、手の痕が見えたとき、真っ黒の影が紫音くんに覆いかぶさったの」
「……」
「手の形してた」

ぞわああっときた。
「ということはみんなそういう能力がある方、ってことなんですか？」

ソファで紫音くんとくっついてる大野さんを見て、聞く。

「俺はよくわかんない、霊に嫌われてんの」
「……嫌われてる？」

「特殊能力に対する不感症だね、０磁場みたいなもん」
櫻井さんが大野さんの言葉を引きついだ。

「ゼロじば？」
「この地球は巨大な磁石ってことは知ってるよね？」
「ええ、まあ」
「その磁石が言うことを聞かない場所があることは知ってる？」
「富士の樹海……」
「ああ、そう。そこでは不思議なことがおこりやすいってことも知ってる？」
「霊、とか……」
「空間がゆがんで見えたりね、逆にそこがパワースポットになったりもするんだよね」
「……」
「この人は巨大な磁石か、磁石の効果を無にする力があるんだと俺は解釈してる」
「……」
「つまり、超能力や霊というのは、この地球上の磁場があって初めて見えたり使えたりするものなんじゃないかな」

櫻井さんの言うことを、大野さん自身が一番ぽかーんとして聞いてる。

「たとえば、これは何色に見える？」
櫻井さんが黒い万年筆を紫音くんに見せる。

「黒、ですよね」
「そう、でもこれは光をすべて吸収するから黒に見えてるんだ、逆に白はすべての光を反射させてる色」
「……」
「これが黒だとわかるには、光が必要だ。光が無ければ色も存在しない。色を知るためには光がいるように、すべてのことは磁力があっての存在と言える」
「……」
「磁力を無効化させるものが傍にいた場合、あるはずのものが無くなり、ないはずのものが存在してもおかしくはない。重力だってそうだろう？」

私はかろうじて櫻井さんの言うことは理解できるけど、みんなポカーンとしてる。

「つまり……？」
松本さんが櫻井さんに不思議そうに聞いた。

「さあ？俺も自分で何言ってんだかわかんなくなってきた」

「じゃあ、櫻井さんは、なんの力があるんですか？」
「なんの力もありません」
櫻井さんがきっぱりと、言い放った。