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途中でスーパーに寄ったら、先生がちょっとワクワクした顔でかごを持ってついてきた。
「ん？」
「いえ……」
なんだかおかしい。
先生とかご。似合わない。
「何？」
「先生と一緒にスーパー初めてですね」
「この前のバーベキューは関矢とくっついてたもんな！」
「先生は飯島さんとくっついてましたよね！」
ちょっと睨み合って顔見合わせて吹き出す。
朝食の食材を買って先生のお家に向かう。
幸せすぎて胸がいっぱい。
「お邪魔します」
家について無意識にそう言ったら先生が振り返って見下ろした。
「じゃないでしょ」
「ただいま……？」
「そう」
頭をワシワシ撫でてくれ
あったかいよ、先生。
「ここに、帰っていいの？」
「あ、でも、引っ越し」
「……そうですよ！先生」
先生が私を見て、そうだったって、言った。
「引っ越しするんですか？」
「うん」
「どうして？」
「ここ、二人で住むには狭いかなぁ、と」
「……誰、と」
「お前以外の誰かかなと想像するお前の脳の仕組みをちょっと疑うんだけど大丈夫か？」
私と？
先生が、とりあえず部屋の隅にハムスターのゲージを置いた。
「私の意志は……？」
「お前の意志なんて知るか」
「……」
「知りません。別れたいとかいう意見も聞きません。悪いこと言わないから俺の言うことききなさい」
「……横暴です！」
「今まで二度か三度、別れてやってもいいと提案したのに、諾としなかったんだからお前の意志など知りません」
「先生！」
「別れる？」
「嫌です！」
「わけわかんねー」
先生の思考回路がわけわかんないよ！
なんでこんなに自分勝手なの！
「わがまま！」
「今知ったの？」
「自分勝手すぎます！」
「褒め言葉ですか？」
「もうやだ……」
「そんな俺をどう思いますか？嫌い？」
「……好き」
先生がふにゃーって笑った。
「飲もーっと」
先生が、服を着替えて台所からビールを持ってきた。
今日はビールなんだ。
私にホイ、と紅茶のペットボトルを渡してくれた。
買ってくれてたんだ。
しばらく先生のおうちに来てなかったのに。
「そういや最近お前俺に嫌いって言わなくなったよね」
先生がソファに座って私を見た。
先生の横に座る。
私の席。
「嫌いって、あの言葉は呪詛ですね。心にも勿論そうですけど、手足に鉛が詰まった気になります」
「うん」
「好きじゃない、とか苦手って言葉に置き換えるように心がけます」
「大人になりましたね」
「すみませんでした」
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作者名：よしの
| 作者ホームページ：
作成日時：2016年8月4日 6時
