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「チーフ……大丈夫？」
櫻井くんが車から降りたら櫻井くんが私の顔を覗きこんだ。
「……え？」
「さっき、頭痛そうに……」
「ああ、大丈夫！ごめんごめん」
「ならいいですけど……」
「優しいね、櫻井くん」
「……ええっ！そんなことないですよ！」
慌てて、手をブンブン振りたいのに両手に大荷物を持ってるからうまく動かせなくて、荷物をわさわさ揺らしてる。
課長はかかってきた電話に出て、私達の方を見てちょっとまってて、って感じに手のひらを見せた。
「櫻井くん可愛いよね」
「何言ってんすか！」
「可愛いよ、仕草とか色々」
「勘弁してくださいよ！やだよ！可愛いって何ー？」
「……だって」
「可愛くない！俺可愛くない！」
「いやいや、櫻井くんは可愛いよ！」
「やめて！可愛いってのは……二宮みたいなやつ……」
「ああ。私のこと鬼チーフって呼んでる二宮くんね！」
櫻井くんが目を丸くした。
「いっ？知って……」
口を覆いたかったんだろうけど両手に荷物！
口をむーっ！て一文字にした。
目はくりくり。
「いいのよ、事実だし」
「そんなことないです！」
櫻井くんが必死な顔で私を見下ろした。
「Aさんは鬼じゃないし可愛いよ！って俺いつも言ってんのにあいつ……」
「……Aさん……？」
櫻井くんが、まずったあ、って顔をしてとうとう天を仰いだ。
口をとがらせてる。
「……すみません……」
「……」
「あの、相葉くんがチーフのことAさんって……えと」
「相葉くんは……私が指導係だったから……今は営業に行っちゃったけど」
「すみません……」
私のこと影でAさんって呼んでたんだ。
嘘でしょ。
「実は俺らの同期、みんな陰で……こっそりAさんって呼んでます……」
……。
櫻井くんが。
Aさんって。
櫻井くんが。
「気、悪くしましたよね、すみません」
「いいんだけど」
「だけど？嫌ですか？」
ふ、と眉を寄せた。
ああ、これだ。
たまにふっと見せる物凄い男っぽい表情。
ほら、今も。
有無を言わせないような、強い目。
「……社内ではチーフと呼びなさい」
「無論です」
「おい、行くよ！」
課長が電話を切って私達を見た。
「はい」
櫻井くんが課長の後ろを歩き出す。
櫻井くんの口から飛び出した私の名前が可愛く聞こえるのは、間違いなく櫻井マジック。
それに。社内ではチーフと呼べとか。
社外で会うこともないのに。
馬鹿だ、私。
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作者名：よしの
| 作者ホームページ：
作成日時：2016年3月29日 21時
