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「……え」
「今度から背後に気をつけたほうがいいよ！」
「……うん」
「ん」
櫻井くんがニッコリ笑って、チュって可愛いキスをした。
あー、もうだめだー、櫻井くんやばー。
ぐったり。
「おっと」
がく、っと力が抜けた私を抱きかかえた。
「もう既にヘナヘナになってるー」
あはは！って楽しそうに笑ってるけど。
「楽しんでる？」
「バレました？」
やっぱり。
そんな気がしたのよ。
「遊ばれてる……」
「真剣です」
「櫻井くんなんなのもう……ドＳよね？」
「あ、こっちの方が好き？今日はこっち？」
絶対弄ばれてる。
「もう知らない！」
手を振り払って、思いっきり突き飛ばして櫻井くんの脇の下からくぐり抜ける。
「あ！逃げられた！」
「ばか！」
「Aさぁーん」
「ばか！」
「Aさんってばぁ」
ぐぬぬ。
今度は可愛いで攻めてきた！
「お邪魔していいですか？」
「遠慮するとこ間違ってます！」
「じゃあ遠慮無く」
櫻井くんが部屋に入ってきて、昨日と同じ場所に座ってニコニコしちゃってる。
かわいい。
許せん。
「お蕎麦食べるんだよね」
「ここ座って」
「ん？」
キリッ。
下心のないような澄んだ目で見つめられて、思わず言われた通りに座る。
「さぁ聞かせてもらおうか」
「なにを？」
「言ってご覧なさい、はい、櫻井くん、大好き！って。ほら！」
「……は？」
「好きになったタイミングと場所、シチュエーションなんかを正確に答えろ！」
「あのぅ……櫻井くん？」
「ほらはやく」
「あんたから先言いなさいよ」
櫻井くんが私をじとーっと睨んでから、ちょっと首を傾げて考えてる顔をした。
口尖ってる。
顎を人差し指でトントンやってる。
「企画に所属されて、新入社員の挨拶させられた時かなぁ」
「……はっ？」
そんなの覚えてない！
「部長が、君あとよろしく。っていきなり俺を指名して座っちゃって。え？何が？何すんの？どうしよう、って困ってたとき！」
「うーん」
「Aさんが、椅子の向きを変えるようなフリして、気づかれないようなくらいの小声で俺に助け船を出してくれたの覚えてる？」
「なんて？」
「整列させて、名前、出身大学とか自己PR、一言意気込みを一人30秒で。全員終わったら総勢何名よろしくって言えばいいよ、って教えてくれた」
言ったような言わなかったような。
「それ私？」
「忘れた……？」
「ごめん……」
櫻井くんがちょっとしょんぼりした。
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作者名：よしの
| 作者ホームページ：
作成日時：2016年3月29日 21時
