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完全に、思考停止。
もともとちゃんと働いてなかったとはいえ、完全に思考を止められた。
「いい加減さあ、俺を可愛い可愛いって言うやめてくんない？」
「……だって」
「だって？何？」
怖い。
櫻井くんが怖い。怖可愛い。
「可愛いから仕方ないでしょ……」
「はあー？」
うわわ、かわいくない態度！
可愛いけど！
「25過ぎた男に可愛い可愛いって舐めてんの？」
「そんなつもりは……」
「可愛いのはどっちだよ！」
……なんですと！
櫻井くんが、あ、って顔をした。
私を口をとがらせて見下ろしてる。
「あー！もお！そんな目でこっち見るな！」
おでこをペシッ！とかたたいてきた！
「ちょっと！後輩！」
「ねえ、自覚ないの？」
「何が！」
「マーブルチョコ、一粒ずつてのひらに出して、茶色にがっかりしたり赤にテンション上がったり」
「……」
「コーヒーカッコよくすすってるくせに中身はカフェオレみたいな砂糖とミルクの甘ったるいのだしさ！」
「……甘党なのよ……」
「それと！何なのそのヒール！ほんとはチビなのにさあ！何センチ身長ごまかしてんの？」
「10センチ……」
「それと！パニックになったらすぐ課長の席を見るでしょ！だからすぐわかんの、あんたが困ってるときは！」
あんたって言われた。
「あんたって言ってすみません」
謝った。
「ツンツン突っ張ってても……責任者よべって言われて誰もいなくてAさんが出て行って泣きそうになってたり……」
「そんなことで泣きませんけど！」
「……こんな小娘じゃなくもっと上連れてこいって言われてた」
半年前の大きなクレームのこと言ってるのかしら。
「Aさん、泣きそうな顔で唇かみしめて。一生懸命謝ってたら……課長がすっ飛んできたことあったでしょ」
「……うん」
「Aさんの前に立った課長の背中……抱きつきたいんだろうなって。そんな顔してた」
「……」
「なんで俺がチーフじゃねーんだよ、ってイラついた」
「……」
「自分がすげーヤダ」
櫻井くん何を言ってるの。
さっきからちょっとなんというか、まるで。
まるで。
まるで私のこと本気で可愛いと思っているように……思えるんだけど……
いやいやいやいや、それはない、決してない！ない！
うぬぼれるな私！
「あはは、じゃあ早く私を追い抜いて助けてくださいね」
「……そのつもりだけど」
「じゃあその偉そうな口はそれまで閉じときなさい」
櫻井くんの目がキリリと鋭くなった。
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作者名：よしの
| 作者ホームページ：
作成日時：2016年3月29日 21時
