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行き先を告げて、なぜか櫻井くんと一緒に帰路につく。
なぜ。
どうして不機嫌な櫻井くんと一緒に帰らなきゃならないの。
それに櫻井くんは新しい組織の中で大切にはぐくまれて、のし上がらなきゃならないのに。
付き合いは大切よ。
なんて思いながら横顔を盗み見。
ううう。可愛いし、かっこいい。
不機嫌そうによせてる眉とか、ゆるく結ばれた唇とか、ふんわり眉と目の間にかかった前髪とか、目が。
白目と黒目のコントラストがたまんない。横顔好き。
「じろじろ見ないでください」
「ああ、ごめん」
見てるのばれた。
もういいや、目を閉じておこう。
目を閉じたら、残ってた涙がつうっと落ちた。
ごしごし。
こんな醜態いっぱい見せたんだからもういいや。
ハンカチタオルをとりだして、顔を押さえて、あー、もーやだー、とか意味もない愚痴を呟いてみた。
今さらかわいくて素敵な先輩ぶっても、どうせ彼女になれるわけでもないんだし。
こんな可愛い櫻井くんの彼女になったら、鏡とかで自分の可愛くない顔を見るたびに死にたくなりそうだから、眺めてるだけなのが一番幸せ。
「可愛いって凶器だー！簡単に人殺せるよね？」
「何言ってるんですか」
「あーまた一人死んだー。ここに屍がひとつ……踏み超えて往くがいいー」
「Aさん？」
櫻井くんがふふふ、って笑ってる。
「寝言ですか？」
「悪夢だー。現実こそが悪夢だー」
「なに？え？なに？」
ちらっと櫻井くんを見る。
目があった。
「あー死んだー」
「何言ってんの？」
「殺されたー櫻井くんの目線で殺されたー」
「殺せませんって！」
「やられたー」
「はいはい、Aさん変なこと言ってないでちょっと寝たら？」
「して櫻井くん、送り狼の危険がある私と一緒にいたら危ないぞ、私が正気を保ってる間に早く逃げるんだ」
ちょっと冗談っぽく言ってみたら、櫻井くんがぶは、っと吹きだした。
「え？Aさんが送り狼になるの？」
「そうよ、かわいい赤ずきんちゃん！」
「Aさんっておっかし！変なの！」
「本気よ、だから早く逃げてね」
ふふ、って笑いながらそう言ったら、櫻井くんが私を見下ろして、見たことないような余裕のある笑顔を見せた。
「いつまでそんな冗談言えるかな、Aさん」
「え？」
「俺はいつまで赤ずきんちゃんを演じればいいのかって聞いてるんだけど？」
櫻井くんが私の頭を、わしわし、って撫でた。
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作者名：よしの
| 作者ホームページ：
作成日時：2016年3月29日 21時
