可愛いは禁止！【SS】 (ページ15)

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「あ、こらチーフ！」
「こえー！可愛くない！可愛くないぞ！嫌われてもいいのか？」
課長が大喜び。
普段はスマートで余裕がある大人なのに、はしゃぐときは全力ではしゃぐ男。

「課長うるさい！」
「こらこらこら」
櫻井くんが私の頭をポンポンした。

……櫻井くんが！私の頭を！ポンポンした！
ポンポンされたの何年ぶりだ！

「酔っぱらいは嫌われるぞー！」
課長がそれを見ていきなりテンション上がってアハハハ！って笑ってる。

「チーフどうしたの……あ、すみません、この人にウーロン茶追加お願いします」
櫻井くんがちょうど料理を持ってきた店員さんに声をかける。

「それとウーロンハイもおねがいします！」
「Aさぁん……ウーロン茶にしとこうよ……」
「年下のくせに生意気よ櫻井！」
「あーあ、もう、課長のロンドン行きのせいですよ、こんなになってんの」
櫻井くんが課長に向かって溜息を吐いた。

「しるか！社長に言え！どうせなら寂しいですとかシクシク泣けばまだ可愛げがあるのに！」
「可愛げなんてとうに捨てたわ！」
「かわいくない！そんな態度とってたら振っちゃうぞ？ねぇ櫻井くん。可愛くないよね？」

課長が可愛く首をかしげて、語尾にハートつけて櫻井くんを見つめた。

「すみません、そろそろお時間になりますのでラストオーダーお願いします」
ウーロンハイを頼んだ店員さんがそう言って、係長がそろそろお開きにするか、と言った。

二時間飲み放題だったのかな？
このあとカラオケかな、いつもの流れだと。

ラストオーダーで櫻井くんも焼酎頼んで、私はウーロン茶にされてたのをこっそりウーロンハイに変更してもらった。
この程度で酔うわけないのに、過保護な後輩。

運ばれてきたウーロンハイを見て、櫻井くんが、こら！ってまた怒った。
怒ってても可愛い。

私の横にすわってる。
ちょっと幸せ。
お誕生日席に座る課長がいないともっといいのに。私を見てニヤニヤしちゃって。

大野くんが戻ってきて、自分の席に櫻井くんがいるのを見て、係長の席に座った。
係長が戻ってきて、自分の席がないことに気づいて、若い女の子の近くに座る。
嫌そうな顔されてる。
先行き不安だ。

結局櫻井くんと課長が仕事や人生について、真面目な話を始めたのを聞きながら、ウーロンハイを飲み続ける。

そういや何にも食べてない。
残ってたたこわさと櫻井くんの横顔をつまみに酒を飲む。
オッサンか私。