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「松本さんには頼りません」
「頼れよ」
「……ご迷惑をおかけします」
「迷惑なんかじゃねーよ」
「初対面で見ず知らずの私に親切すぎます！」
「……」
「どうしてそこまで気にかけてくれるんですか」
「それはね」
松本さんが、ポツリ、と呟く。
「はい」
「俺のことを好きだといってくれる人、できたら全員幸せになってほしいって思ってる」
「……そんな無茶な！」
「無茶かな？」
松本さんが電話の向こうで、はは、って吐息みたいに笑う。
「無茶ですよ、何人いるんですか。どう少なく見積もっても、30万人はいるわけで」
「どこから出したのその数字」
松本さんがアハハって、笑った。
笑い方もすき。
ほんとうに楽しそうに笑うの。
「大体です、５で割りました」
「ああ、ファミクラ会員？」
「そう」
「ふふ」
くすぐったい。
「もっといます、事情でファっミリークラブに入れない人もいますから」
「そうだけどさ、でも、俺はその人たち全員と関わることできないから」
「そりゃそうです、もみくちゃになります」
「あはは。だから、一期一会。運よく関われた人には、誠意を尽くしたいと……」
「そういうとこ大好きです！」
「……いま一瞬ドキッとした、ストレートだなお前」
ああ、そんな素直なところも。
「私は大丈夫ですから！」
「だからさ、自分は大丈夫って言ってる奴が一番危険なんだって」
「……」
「俺の周りでお前が一番ピンチに見える。……会社でへんな噂になったりしてねえ？」
「なってます、泥棒猫って」
松本さんが吹き出した。
「無職になって親に毎日お小言言われる日も遠くねえじゃん！」
「そうなんですよ！」
「そうなったら、俺との出会いのお釣り？それもなくなるだろ」
「ラッキーのお釣り？」
「……ああそういうこと？お前幸運と同じだけ不運もあるって思ってるんだ、なるほどね」
松本さんに言われて、ハッとした。
そうだ。
この世はラッキーばかりが続くわけないし、不運ばかりが続くわけも無いと信じてる。
「可哀想な奴」
松本さんが、ふふふ、っと小さく笑った。
「……ラッキーなことがあったから、嫌なことがあっても平気なんです」
「ラッキーなこと？」
「松本さんと会えた」
「……そんなんでストーカー被害に遭うとか、俺と付き合ったらどうなんの？」
うわあああ、なんてことを。
「……げほ、げっほげほ、ああ、すみません、むせた」
「なんだよ！」
「びっくりして気管に、けほ」
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作者名：よしの
| 作者ホームページ：
作成日時：2015年10月13日 10時
