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「さて、と。俺帰るよ、ごゆっくり」
周防が立ち上がる。
「……」
「離婚、というか……まだ入籍もしてなかったわけだし、あいつの体調のことも考えて新婚旅行は予定してなかったから今俺ホテル住まいで」
「入籍してなかったの」
「うん。まぁ、ちゃんと片付いたらまた死ぬ気でお前口説きに行くから覚悟しといて」
「……来ないでね、好きな人がいるから！」
「……え！誰！」
「言うわけないでしょ！」
「誰だよ、言えよ！」
「バッカじゃないの？」
「言えって！誰だ、どんなやつだ！俺よりいい男なのかまずそこから聞こうか」
「何様よあんた！」
「俺様だ！」
「俺様のお帰りです、お出口はあちら！」
私達が口論してるのをみてももちゃんが、はぁーってため息を吐いた。
「懐かしい光景」
はっ。
つい。
「俺、お前じゃなきゃダメなんだよ、わかるだろ？」
ももちゃんが、そうだね、ってちょっと悔しそうに言った。
私達は、確かにお似合いの二人だった。
「ストーカーにならないでね」
「お前が嫌がらなかったらいいだけだろ」
「あー、ストーカーになりそう」
「振り向かせるから覚悟しとけ」
「完全ストーカー脳よね」
「情に訴えかけてやる」
「馬鹿だとは思ってたけど作戦を敵に教えるなんて馬鹿通り越してゴミね、ゴミ」
「……お前ほんとに俺の事好きだったの？これで？いつもこの扱いだったけどこれで？」
周防があはは、って笑った。
「言いたいことを何でも言える相手は限られているでしょう？私彼氏だけじゃなくて本音言える唯一の男友達も失ったんだよ」
「……」
「被害者面するな、私が一番の被害者！言っとくけどね、こっちには全治一週間の傷と元彼に襲われるという最悪な被害者なの！」
「狂言だな」
「目撃証言もあるんだけどね？」
周防が、あ、って顔をした。
「松本くん？連絡取れるの？」
「……」
「とれないのに何言ってんだか。じゃーな、また連絡するよ」
「してくんな！」
「待ってる、ってことね？了解」
周防が店から出て行って、ももちゃんが呆然とした。
「なにあいつ」
「なんか吹っ切ったみたいね、これだからポジティブな人は」
「あれ、ストーカーになるわね」
「なるね……」
「気をつけてね……」
結局二人でご飯を食べて、お会計をしようとしたらもう済んでいた。
まぁ、そういう人だ。
家に帰って脱力した。
なんだかもうやだ。
疲れることばっかり。
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作者名：よしの
| 作者ホームページ：
作成日時：2015年10月13日 10時
