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「そんなこと、言っちゃダメですよ」
思わず、制した。
やっぱりどうしても。
周防もあの子にそういったのかなって、そんなことが頭を過る。
そうやって、彼女に優越感を抱く自分に対しても自己嫌悪だ。
「あの子もそう思ったのかな」
「……え」
「周防にほっとけない、とか言われて嬉しくなったりしたんでしょうか」
「……」
「他の人の大切な人と知りながら、どんどん惹かれて堕ちちゃったんでしょうか」
「……あ、なんか、……ごめん」
「いいんです、嬉しかったんです、自惚れそうになる自分に対してだめだぞ、と、言い聞かせるために、わざと言ってます」
「……」
「松本さんのそのほっとけない、という言葉に大した意味は無い」
松本さんが何かを言いかけようと口を開いて、押し黙った。
「でも嬉しかったから、忘れません。嘘でも嬉しい」
「本気で言ってる」
「意地悪な人ですね、残酷です」
笑ってそういったら、ちょっと怒った顔をした。
「俺何か出来ないかなって、本気でそう思って」
「ありがとうございます」
「だから」
「もう、やめて」
泣きたい。
「……え？」
「松本さんの同情してくれるその優しさに付け込んで、何かあったらきっと頼りにしてしまいます」
「いいよ？」
「用がなくても会いたいと思うかもしれませんよ？」
「……友達としてなら、都合が合えば、別に……」
「そして……嘘をついてまで会おうとするかもしれません」
「そうだったとしても、騙される俺が悪いんだからいいんじゃね？」
「そうやって優しさに依存して、……一度でいいから抱いてくださいってお願いするかもしれません……」
「それは……」
「だから、もう、」
その時、後ろから、ああ、居た居た。って声がした。
「……ん？」
うわあ。ＴＶでよく見る、迫力のイケメン俳優さんがふたり並んで見下ろしてる。
特に変装するでもなく、めがねとか帽子くらいの。
「この子？さっき言ってた」
「うん」
「あ、帰ります」
「どうして？話聞かせてよ？潤のお友達でしょ？じゃあ、俺ともお友達になれるよ」
「……えっと」
「困ってるじゃん、A」
松本さんが、にかって笑った。
ああ、別世界の住人だ。
「帰りますので……ワイン代、これで……」
「ああ、付き合ってくれたお礼だから気にすんな」
「いいよ、潤は払わせてくれないよ？ありがとう、でいいよ」
もう一人の俳優さんが言う。
「失礼しました！」
「まって」
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作者名：よしの
| 作者ホームページ：
作成日時：2015年10月13日 10時
