91、あなただけ ページ21
緊張しすぎて口から、心臓がとびでそう。
それに気づいてる和は、ブルブル震えてる私の頭をぱこん！と叩いた。
「いたー！」
「期待しすぎ」
「期待っ？」
「普通にしててよ！」
「普通っ？」
「あーもー！うるさい！」
「うるさいっ？」
「真似すんなや！」
「なにが！」
全然ロマンチックな感じにならなくて、私達は、結局笑いあいながらおでこをゴチンってぶつけて、笑いあった。
「いしあたま！」
「そろそろ、しー……」
和の指が私の唇に触れて、急に、茶室のあの日みたいな妖艶な目になった。
目が離せなくなって、すう、って吸い込まれそうになる。
「きれーな目……」
「……おれね、たぶん」
「……うん」
「はじめてあったときから、こうなること、知ってた気がするよ」
触れるだけの優しい優しいキスから、
最近慣れてきた、深いキスに変わる。
必死に応えてたら、ふ、って笑われた。
和の浴衣をぎゅうううって握りしめてるのに気付いたから？
固まってる手の、指いっぽんいっぽんを、ほどいていく。
和の、肩がはだけてるのを見て、目の前に広がる風景が、和だけで覆われて、
和の鎖骨を、首筋を、顎を、そして顎のほくろを見つけて、和だ、って安心した。
ドキドキさせられてるのも、
安心させられるのも、
私の精神状態をコントロールできるのは、
いつも、和だけ。
和だけが、私を、簡単にいいなりにする。
和の、香り。
和の吐息が私の耳に直接吹き込む。
目を開いたら、透き通った目が、私を見下ろして、ん？って優しく聞き返して、
私に触れる指は優しくて、唇が私を喰む。
和が私の五感まで全部支配した。
私の中から、感じたことのない感覚がわきおこる。
愛おしくて愛おしくて、
わたし、死ぬかもしれない。
知らなかったよ。
わたし、全然、知らなかった。
カラダが近づくってことは、
ココロも近づくってことだったんだ。
まだ誰も、触れたことのない、私の奥深くに、
和だけが、届く。
感情が吹き出して、涙が止まらなくなった私に、お前ってホント泣き虫だよね、って。
優しく、私をよしよしし続けた、そんな夜。
死ぬまで離れないもん、ってそう思って、
死ぬまで、絶対離さないよって、多分、無理矢理言わせた。
クスクス笑いながら朝まで何度もキスをした。
幸せで目が眩む。
この人を失うなんてこと、考えられない。
そう思ったら、また泣けた。
「泣き虫……」
私を、泣き虫に、させるのも、あなただけ。
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やっち(プロフ) - おお。当たってました❗よしのさんの小説、色々違うお話を書かれてるので凄い尊敬します。もう感情移入して泣いてますよ。これからも色んなお話を楽しみにしています💕 (2021年10月4日 18時) (
レス) @page33 id: cc7865b69e (このIDを非表示/違反報告)
やっち(プロフ) - こんにちは。予想ですがカズは俳優になって主人公と結婚してると思います。絶対！ (2021年10月4日 16時) (レス) @page4 id: cc7865b69e (このIDを非表示/違反報告)
ちひろ - 高校生の時この作品に出会って、心動かされて24歳になってふいに夢に似たようなシーンが出てきて読み返しました。何度読み返しても素敵な作品。もう一度こんな気持ちにさせてくれてありがとうございます。 (2020年10月2日 21時) (レス) id: 7bf8bcbcd4 (このIDを非表示/違反報告)
みゅう(プロフ) - 大切な、前へ進むための力強いメッセージ。まさに、今のわたしに、また読み返してほしかったんです。将来、オトナになるとき、絶対また読んでほしいと当時おもっていました。消さないで置いていてください。そして改めてこんな面白くてステキな作品ありがとう (2020年2月19日 1時) (レス) id: 61dd42d003 (このIDを非表示/違反報告)
みゅう(プロフ) - キノキミ、No.1で好きな作品です。久しぶりに読み返せました、開放ありがとうございます(涙)そして二宮サン天才外科医役！(；▽；) (2020年2月19日 1時) (レス) id: 61dd42d003 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：よしの
| 作者ホームページ：
作成日時：2015年6月14日 8時
