83、戻んなきゃ ページ13
「ん？あれ？」
大野くんが、目をこらす。
「あれ……。あれ俺じゃん」
和が門の向こうをみて、言う。
「……ほんとだ」
「何しに来たの、わすれもの？」
昨日のキスを不意に思い出して、思わず、目をそらす。
「……ちょっとお、なーにやってんの、アナタ」
オトナの和が玄関に入ってきた。
なんとなく、隠れる高校生の和。
「怪我しちゃってー」
「聞いたよ、だから来たにきまってんじゃん。あなた落ち込んだらいつもここにいるから」
「……」
「A、おはよ」
「おはようございます」
「んふ。なんか、よそよそしいじゃん。チューしちゃったから？」
「はあ？」
和が、オトナの和を見た。
「あ。目があっちゃったね、大丈夫なのかなこれ」
オトナの和が、ちょっと笑う。
「なに？チューってなによ！」
「ほっぺにチューくらいいいじゃん！」
ああ、このひと、嘘つき！
嘘つきだ。怖い人だ。
でも前から和はほんと、嘘つきで、嘘が上手で。
「大野さん、ほら、夜まですっげ暇なんでしょ、いこ」
「どこに」
「うち、来てよ。うちのスイートハニーが会いたいってさ。タクシー待たせてるから、いこ」
和が、大野くんを支えるみたいにした。
「スイートハニー……」
「あ！」
オトナの和が、くるんと振り返った。
「大事なこというの忘れてたわ！」
「なに？」
「10年前の、６月17日。Aはね、未来の旦那様に告白されるんだけど」
「……はあ？」
「一旦、阻止したけりゃ帰んなきゃね？」
「相手、だれよ！」
和が私より必死で聞いてる。
「ワタナベ？そんな名前だったよね、あいつ」
「……」
「あれ？タカハシ？よくある名前だった。知ってた？あいつも医者の息子」
「それ、言っちゃっていいの？」
「運命、変えたいんでしょ？」
大野くんが、苦笑いした。
オトナの和も、涼しい顔してる。
「ほら、帰んなさい、おばあちゃんにも早く会いに行ってあげて。……そこの二宮クン！天才外科医に負けんなよ！多分、負けるけど！お前はあいつには勝てないよ！」
「こら、待て、二宮サン！」
「待ちませーん。うちの可愛いワイフがまってるもーん」
「ワイフって誰よ！」
「そのうちわかるよ、嫌でも未来くるんだし」
ワイフ。
ってことは、オトナの和、結婚してるんだ。
呆然としたまま、二人が消え去った方向をみた。
「戻んなきゃ」
「……」
「ワタナベの告白阻止しなきゃ！」
和が、叫んだ。
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やっち(プロフ) - おお。当たってました❗よしのさんの小説、色々違うお話を書かれてるので凄い尊敬します。もう感情移入して泣いてますよ。これからも色んなお話を楽しみにしています💕 (2021年10月4日 18時) (
レス) @page33 id: cc7865b69e (このIDを非表示/違反報告)
やっち(プロフ) - こんにちは。予想ですがカズは俳優になって主人公と結婚してると思います。絶対！ (2021年10月4日 16時) (レス) @page4 id: cc7865b69e (このIDを非表示/違反報告)
ちひろ - 高校生の時この作品に出会って、心動かされて24歳になってふいに夢に似たようなシーンが出てきて読み返しました。何度読み返しても素敵な作品。もう一度こんな気持ちにさせてくれてありがとうございます。 (2020年10月2日 21時) (レス) id: 7bf8bcbcd4 (このIDを非表示/違反報告)
みゅう(プロフ) - 大切な、前へ進むための力強いメッセージ。まさに、今のわたしに、また読み返してほしかったんです。将来、オトナになるとき、絶対また読んでほしいと当時おもっていました。消さないで置いていてください。そして改めてこんな面白くてステキな作品ありがとう (2020年2月19日 1時) (レス) id: 61dd42d003 (このIDを非表示/違反報告)
みゅう(プロフ) - キノキミ、No.1で好きな作品です。久しぶりに読み返せました、開放ありがとうございます(涙)そして二宮サン天才外科医役！(；▽；) (2020年2月19日 1時) (レス) id: 61dd42d003 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：よしの
| 作者ホームページ：
作成日時：2015年6月14日 8時
