44、非現実的 ページ9
「え？ちょっと待って？パラレルワールド？意味わかんねー」
松本くんが眉間にシワを寄せる。
「だからね、俺は知ってたの！自分が過去から自分に会いに来ること」
「え？」
「だから！俺は俺が過去から来ること知ってたの！だから未来の俺らも俺らが会いに来ること知ってるはずなんだってば！」
大野くんが、腕を組んで、うーん、って言って、手をぽん、と叩いた。
「わかんないから、とりあえず、うちの別宅にいこ。鍵、あるし」
大野くんが鍵を取り出した。
「ダンスとか楽器の練習に使ってる、倉庫みたいなとこ。とりあえず行こ」
「取り壊されてたり……」
「更地にしたら税金高くなるから多分そのままでしょ」
大野くんが、すたすたと歩きだした。
相葉くんもドーナツを齧りながら、待ってよーってついていく。
「とりあえず、情報収集しなきゃね？」
松本くんも颯爽と歩きだす。
和は、ちょっと考える顔をして、その後をついていく。
「いこ、櫻井くん」
「やむを得ない。遭難したらその場で動くなというのが鉄則だけど」
櫻井くんが大真面目に言って、なんだかおかしくて笑った。
櫻井くんも、私の顔を見てちょっと笑って、いきなりキリリとなった。
「Aと皆は俺が守る！うん、そうする！」
「いや……」
お断りしようとしたら、首をぶんぶん振った。
「お願い、なんか目的頂戴！ここから動きたくなくなるから！」
「じゃあ、つれてって？」
「手繋いであげようね！」
「お願いしまーす！」
櫻井くんがトホホって顔で私の手を引いて歩き出した。
櫻井くんってあれだ。
非現実的な事が怖いんだきっと。
一番常識人だもんね。
「おれ、どうなってるかな」
「うーん」
「未来の智くんに会えるかな」
「どうかなぁ」
「……智くん同士鉢合わせしたらまずくない？」
「……多分」
「走ろう」
櫻井くんが走りだした。
「あ」
「あー、翔さんAと手つないでるー！何で？」
松本くんが和と並んで歩いてて、ケタケタ笑ってる。
「変な組み合わせ！」
「なんで？俺とAがラブラブでも別に差し支えないだろ？高校の時の同級生と結婚とかしてたら好感度高そうだよな！」
櫻井くん一体何を。
「誰の好感度あげたいの？」
「世の女性陣？」
「こんな男絶対嫌だ」
「贅沢言いやがって！」
「手離して」
「ごめん」
「何あの二人」
和がぽかーんと私達を見た。
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作者名：よしの
| 作者ホームページ：
作成日時：2015年6月10日 0時
