39、一生の(6/10) ページ4
その日の夜は高熱を出した。
お約束すぎて自分に引く。
小学生以来の高熱。
39度ってふわふわするんだ。
これで頭痛と体の痛みがなかったら逆に気持ちいいかもしれない。
酔っぱらいたい気分だったから、むしろちょうどいい。
お母さんも、転校して初めて泣きながら帰ってきた私を見てその日は何も言わなくて。
次の日、学校を休んで丸一日寝てた。
その夜、お母さんが、半笑いで聞いてきた。
「失恋？」
ああ、やっぱり何かすぐバレる。
「……」
聞こえなかったふり。
「彼氏出来たら内緒にしないでお母さんに教えてよー黙っててもバレるんだから」
そう言って冷えぴたを貼られた。
「つめた！」
「どんな子？好きな子いるんでしょ」
「……可愛い」
「へえ！可愛い子が好きなの？へえ！意外！リスみたいな？」
「リスみたいな人もいる、猫っぽいのも。あとは、狼みたいな子と、ゴールデンレトリバーみたいな子と……柴犬」
「みせて！」
ブラバンで撮った写真を見せたらお母さんが、うわああ！って言った。
「何このイケメン揃い！アイドルグループか！……お母さんはこの子が好み」
ああ、松本くん。
お粥を手渡されて、食べ始めたからおかあさん寝るからあっち行ってとも言えなくて。
「松本くん、実物はもっとすごい迫力。その子が狼。モッテモテ」
「この子は？」
「リスみたいに口の中いっぱいにして食べるの。生徒会長で、すっごいモテる櫻井くん」
「この子は？」
「……ワンコみたいでしょ？意地悪だけど可愛いから許しちゃうんだ、二宮くん」
「ああ、なるほどー。この子は？」
「いつも元気で、優しくて明るくて、すっごくいい子。過去最高にいい子。相葉くん」
「この子がゴールデンレトリバーね、じゃあこの子が猫？」
「いつもひなたぼっこしながら寝てる。釣りとか、お魚大好き、部長の大野くん」
お母さんが、写真をジーッと見た。
「あとはらんちゃんね」
「うん」
「こういう高校とかのお友達は大事にしなさいね……大学になったらそこまで仲良くなれないからねー」
「そうなの？」
「うん。やっぱり大人の付き合いになるからね、本音を隠して付き合うようになるし」
「……」
「高校は濃い付き合いよね、本音でぶつかるから、どうしても。ずっと一緒だし」
「……うん」
「……努力次第で一生のお付き合いになるよ、ＯＢ会とかあるしね」
お母さんが懐かしそうに微笑んだ。
一生の、お付き合い。
なんだか、無性に泣きたくなった。
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作者名：よしの
| 作者ホームページ：
作成日時：2015年6月10日 0時
