38、涙の雨 ページ3
「……は？何、やって……」
何が起こったの？
絶対、今のキスだよね？
私、キスされたよね？
なんで？
なんでそんなこと？
……え？他に好きな奴がいる、って言ったけど、
私のこと……？
でも、そんな、まさか。
……え？
混乱の渦に巻き込まれて何も言えないまま呆然としてたら、和が、呟いた。
「こんなことされるんだけど？ワタナベに」
「……」
「どうよ？好きでもない奴にキスされるの、どんな気分？」
「……や……」
涙がぶわ、っとこみ上げる。
「なんでこんなこと……」
「誰でもいいって言ってたから、こんな感じだよーって教えてあげようかなってね？親切心。ありがとうって思ってよ」
「わたし、今の、ファースト……キ」
「残念でしたね、愛のないキスしちゃって！ご愁傷さま！」
「……」
和が、腕でゴシゴシって、唇を拭った。
「あーくっそ、なんでこんなクソつまんない女とキスしたんだおれー」
怒りで目が眩んだ。
「ひど……」
「お前が誰でもいいって言うから！」
「誰でも良くない……」
「……」
「誰でもいいわけないよ！」
「じゃあ誰が良かったの」
「せめて……私のことが好きだって言ってくれる人なら……だって和……は」
視線が絡んだ。
もつれて、落ちた。
そして、は、って短く笑った。
「あ、ごめん。キスしたくらいでその気になんないでね、挨拶みたいなもんだから」
涙がぽろぽろ、落ちた。
もしかして、
和の好きな人が私だったら。
それなら、私も、初めてあった時からずっと好きだったよって答えて、なんて。
一瞬でも期待した自分が嫌になる。
カタン。誰かが準備室の扉を覗いたような音がした。
誰か来た？
こんなとこ、誰かに見られたら。
「……あ」
和が、何かを思い出すかのような顔をした。
「A、違う、これは違うんだって、まってお願い」
「やだ！」
「……A、あのね」
「和なんか……」
「……」
和が、私が口を開くより前に、絶望的な顔をした。
次、私がいうセリフを知ってるかのような。
「和なんか死んじゃえ！」
かばんを抱き寄せて、教室を飛び出す。
誰かにぶつかったみたいな気がした。
「ごめんなさい」
俯いたまま謝って走りだす。
最悪だ。
最悪だ。
下駄箱まで走って、靴をトン、って床に置いたら涙がポタポタって落ちた。
「和のバカ……」
雨の中を、走りだす。
うわぁん、って泣きながら。
涙が雨に混じって、流れて落ちる。
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作者名：よしの
| 作者ホームページ：
作成日時：2015年6月10日 0時
