53、息子が５人 ページ18
100均で必要なものを買い揃えて、
皆でちょっとした着替えとか部屋着を買った。
なんだか修学旅行の準備みたいで楽しい。
大野くんが、未来の大野くんが置いていったお金を自由に使ってるのが気になるけど。
自分に借りるんだからいいでしょ、っていう妙な持論の下、お金を使いまくる。
私たちは精々1000円から5000円くらいまでしか持ち歩いてなかったし、
正直、未来の社長はかなり頼りになった。
女子の買い物は遅い！と文句を言われながら、やっと食品コーナーに行く。
中に入ったら、魚屋さんの前で腕を組んだまま全く動かなくなる人と、
うきうきカートを押しながら勝手におすし屋さんコーナーのガリを持って帰ろうとする人と、
中華料理の香辛料と、ハーブ系のコーナーで一個ずつチェックする二人と、
そもそも食に全く興味がなくてお菓子とか飲み物ばっかり買おうとする人と、
こんな息子が５人いたら頭がおかしくなりそうで、熱、ぶり返しそう。
「いい加減にして！食べられるもの買って！」
ターメリック、クミン、ガラムマサラ、カルダモン、チリペッパーを手にコリアンダーをみて悩んでる松本くんに、カレー粉にしてください、その前に野菜見てって言って、
豆板醤とＸＯ醤とウスターソースをかごに入れた相葉くんに、何を作るのか聞いたら考え中って言って力が抜けた。
魚屋さんの前にいる大野くんは小さい男の子に、こっち見てるあいつ、カンパチってんだ、とか言ってるのは害がないからスルー。
櫻井くんはニッコニコしながらカートを押してる。
どうやらカートを押して、皆が入れるものを、いちいちチェックするのが楽しいらしい。
試食とか超楽しんでる。
お会計をしようとしたら、和がいない。
迷子？って思ったら、ビール売り場の前の、エンドレスで流れてるＣＭをぼーっと見ながらなんか考え込んでる。
「制服着てるんだからジュースにしてよ」
背中をトントンってしたら、ぱっと振り返った。
「ケチ」
「だって……」
「この生徒手帳見せて、え？27歳？って思ってくれないかな」
「……たしかに……」
どう考えても今私たちは17歳だけど、生年月日は27歳になってるはずで。
「……」
「……」
「どうした？」
櫻井くんに同じ事を話したら、櫻井くんも考え込んだ。
「けど制服を着てることを職務質問されそうだからやめとこう」
魚屋さんの前にいる大野くんを連れて、レジに向かう。
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作者名：よしの
| 作者ホームページ：
作成日時：2015年6月10日 0時
