24.徒花 ページ27
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「A、」
「なんでありんしょう」
見世の廊下を歩いていたAは楼主に呼び止められた。楼主は幼馴染のような存在で、Aと呼ぶのは彼ぐらいだ。
楼主はその先は言い淀んだ為、ここでは話しずらいことだと察したAは黙って座敷を入り、襖を開けたままにした。すると、その後に楼主が重い足取りで入ると、静かに襖を閉める。
「朝霧の事なんだが…」
まだ代替わりして間もない若い楼主・
「水揚げの相手を決めるように、言って欲しい」
「水揚げ、…もうそんな時期かえ、早いでござんすねえ」
気にする様子もなく、煙管を吹く。蒼は、頭を垂れて、続きを言う。
「…朝霧の返事次第では、Aになるかもしれない」
「わっちでありんすか。構いやせんが、百合音にも弟はおりんす。仲のいい者とだと思いんすよ、
わっちらのように」
そのとき、襖は突然に開いた。
「…なんじゃ、朝霧。おったんかえ」
その主は朝霧だった。朝霧は何も言わず、入り楼主の前に正座した。
「蒼さん、わっちの水揚げは淀屋の若旦那が相手でござんす」
衝撃の一言に蒼は口をあんぐりと開け、Aは煙管を落とした。
「何をおっせえす、朝霧」
Aは朝霧の両肩を掴み、訴えるように言葉をぶつける。
「見世の者と水揚げをするものが普通でありんす、何を…！」
「兄さん、それは掟ではありんせん。
もう若旦那の了承は得てありんす」
いつまでも無垢でからかいがいがある弟だと思っていた朝霧の言葉に初めてAは何も言い返すことが出来なかった。
「ッ…」
Aは力無く、掴んでいた腕を下ろす。
蒼は、一呼吸ついてから朝霧に聞き返した。あやすような静かな声色で。
「それは本心かい、朝霧」
「はい、詳しくは後ほど伝えに行きます。
兄さんにも説明が必要だと思うので、」
「そうだな」
ゆらりと、蒼は立ち上がると朝霧と華永野に目を合わせると、座敷を出ていった。朝霧は兄の手から落ちた煙管を拾い、渡した。Aの顔は複雑で、迷子のようだった。
「兄さん、許してくんなまし」
「……許しもなにも、若旦那はただの客でありんす。
構いんせん」
その時は一切Aは朝霧と目が合わせられなかった。今は自分の何かが溢れてしまいそうで、逃げたくなるから。
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作者:久しぶりですねぇ
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Ria。(プロフ) - 初めて見たのですが、、ッ好きすぎます。尊すぎます。こんな尊い小説があってもよろしいのでしょうか。ええ、もちろんあってよろしいです。この素晴らしい小説に出会えて良かったです！！ (2022年4月29日 18時) (
レス) @page46 id: 6d33a476b4 (このIDを非表示/違反報告)
大手裏剣(プロフ) - 藤雲ルアリナさん» あああ！お喜ばれる小説を書けていたようでとても嬉しいです！やる気でますね……頑張りますね！ (2020年4月8日 15時) (レス) id: fe109e5f3f (このIDを非表示/違反報告)
藤雲ルアリナ - 世界観、空気、文体、ストーリー、もう何もかも好みです！毎回更新楽しみにしてます！ (2020年4月8日 0時) (レス) id: 3165ea2c89 (このIDを非表示/違反報告)
大手裏剣(プロフ) - 氷浦メグさん» ひえぇっありがとうございます泣 これからも暇潰しにでも覗きに来てください… (2020年3月13日 17時) (レス) id: 54569fedb3 (このIDを非表示/違反報告)
氷浦メグ(プロフ) - 初見です。尊いですありがとうございます！ (2020年3月13日 13時) (レス) id: 3357bae399 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：愛之助
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/oh19years/
作成日時：2019年2月16日 22時
