16.雪月花# ページ19
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「
座敷に入り、Aはどっかと腰を下ろし、鋭い目付きで若葉に問い掛けた。若葉は少し、驚いた。
仮にも若葉は客であるのに、態度が悪いからだった。そして、自分の想い人はこれに騙されたのか、と思った。
「貴方には知らなくてもいい事だと思いますけど」
若葉とAの間にはピリピリとした雰囲気が漂っていた。Aはじっと若葉を見て、ふ、と鼻で笑うと口を開いた。
「大事な客を気にかける程度だ、女の癖にそうキツい顔するな」
「…はぁ、亜簾様は縁談を受けました。もうここには来ないと思います」
Aは眉をピクリと上げたが、直ぐに平静を装った。若葉はそれに気付くことはなかったが、Aは焦っていた。
「縁談か、まぁ当然か」
Aは懐から巾着を出した。若葉のものである。百合音から渡されていた。
若葉は受け取る前にAに言った。
「貴方はそうやってすぐに切り捨てられるんですね。好きでもない女性にも男性にも嘘の好意を簡単に向けられる、
好きでもない相手の行為に何も感じないんですか?それじゃ、人形みたいです」
Aは眉をピクリと上げた。そして、若葉を睨み付け、強引に押し倒した。若葉は衝撃と痛みに顔を歪めた。目の前にきたAの顔に若葉は息が詰まった。
Aの顔は苦しい、と訴える顔だった。
「男は性に対する欲がわけば誰でも抱ける。だが、何も感じないわけじゃない。
何も知らない癖に。郭の女でもねぇのに語ってんじゃねぇよ。
ここには選択なんてない。うじうじアイツに付いてるだけのお前には分からねぇだろうよ」
Aは何も言わなくなった若葉を見ると、舌打ちをして身体を離すと、座敷を出て行った。Aはこの仕事しか生きる意味がない。それを、否定され、人間ではないと否定された、屈辱だった。
今までならば、軽くあしらって気にもしないのだ。そして、嗚呼、と零す。
「
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Ria。(プロフ) - 初めて見たのですが、、ッ好きすぎます。尊すぎます。こんな尊い小説があってもよろしいのでしょうか。ええ、もちろんあってよろしいです。この素晴らしい小説に出会えて良かったです!! (2022年4月29日 18時) (レス) @page46 id: 6d33a476b4 (このIDを非表示/違反報告)
大手裏剣(プロフ) - 藤雲ルアリナさん» あああ!お喜ばれる小説を書けていたようでとても嬉しいです!やる気でますね……頑張りますね! (2020年4月8日 15時) (レス) id: fe109e5f3f (このIDを非表示/違反報告)
藤雲ルアリナ - 世界観、空気、文体、ストーリー、もう何もかも好みです!毎回更新楽しみにしてます! (2020年4月8日 0時) (レス) id: 3165ea2c89 (このIDを非表示/違反報告)
大手裏剣(プロフ) - 氷浦メグさん» ひえぇっありがとうございます泣 これからも暇潰しにでも覗きに来てください… (2020年3月13日 17時) (レス) id: 54569fedb3 (このIDを非表示/違反報告)
氷浦メグ(プロフ) - 初見です。尊いですありがとうございます! (2020年3月13日 13時) (レス) id: 3357bae399 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:愛之助 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/oh19years/
作成日時:2019年2月16日 22時