5.空虚の華 ページ7
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「知っておりんす。こことは真逆の世界、男吉原は若旦那聞いたことはありんせんか?」
「ない、ソイツはそこにいるのか」
「あい」
男吉原、亜簾はそこに行ったことがあったのに全く場所を覚えていなかった。いや、混乱していた亜簾はそんなことを考える余裕はなかった。
「それはどこだ」
「わっちは知りんせんが…Aさんは東雲楼の華永野花魁でござんす。わっちの逆、男吉原の一の花魁じゃ。」
東雲楼。そうだ、そう言っていた。男吉原、華永野花魁…あの小さな背は数年で頂点へと上り詰めたのだ。亜簾は月詠花魁に礼を言って見世を出た。
もうすぐ、会える気がした。この感情を確かめられる。
「男吉原…か。あそこは治安もよくない、気を付けなさい」
相手が男だとわかっても、橋衛門は気味悪く顔をしかめることも何か言うこともなかった。亜簾は今まで、一度も橋衛門を頼ったことも我が儘を言ったことがなかったからであろう。
「…何でお前付いてきたんだ」
「私は若旦那の世話係ですので、女吉原は置いて行かれましたが、何処までもお供します!」
彼女は、亜簾が淀屋に拾われてから話すこと以外何もわからなかった為、この世界のことを教えるために雇われた者である。そして、恋心を秘めていることを亜簾に気付かれているのを彼女は知らない。
「亜簾様何かあったら私が守りますから!」
「若葉が俺に守られる、の勘違いだろ」
名は若葉といった。亜簾より年下の17歳だ、恋に恋をするような乙女である。
「守ってくれるんですか…?」
若葉は頬を朱に染め、上目遣いで亜簾に問うた。が、現代にいた頃から恋愛への関心が薄い亜簾は表情一つ変えることなく、無視した。
「あっ…亜簾様…」
女心がわかるはずもない亜簾の背を若葉は哀しみの目で見つめ、またついて行った。
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東雲楼の華永野花魁(Aさん)出すの遅くてすみません。多分次回は必ず…!!
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Ria。(プロフ) - 初めて見たのですが、、ッ好きすぎます。尊すぎます。こんな尊い小説があってもよろしいのでしょうか。ええ、もちろんあってよろしいです。この素晴らしい小説に出会えて良かったです!! (2022年4月29日 18時) (レス) @page46 id: 6d33a476b4 (このIDを非表示/違反報告)
大手裏剣(プロフ) - 藤雲ルアリナさん» あああ!お喜ばれる小説を書けていたようでとても嬉しいです!やる気でますね……頑張りますね! (2020年4月8日 15時) (レス) id: fe109e5f3f (このIDを非表示/違反報告)
藤雲ルアリナ - 世界観、空気、文体、ストーリー、もう何もかも好みです!毎回更新楽しみにしてます! (2020年4月8日 0時) (レス) id: 3165ea2c89 (このIDを非表示/違反報告)
大手裏剣(プロフ) - 氷浦メグさん» ひえぇっありがとうございます泣 これからも暇潰しにでも覗きに来てください… (2020年3月13日 17時) (レス) id: 54569fedb3 (このIDを非表示/違反報告)
氷浦メグ(プロフ) - 初見です。尊いですありがとうございます! (2020年3月13日 13時) (レス) id: 3357bae399 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:愛之助 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/oh19years/
作成日時:2019年2月16日 22時