どうか朝には元気なきみで【完結】 (ページ6)

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――いや、いっつも可愛いんだけどね。普段とは違うのに、こう、ぐっとくるというか。なぁ？

誰にでもなく内心問いかけながら薬を出す。喉が酷いようならばそれ用のものをと思ったが、今は総合薬のほうが良さそうなのでそちらにする。のど飴はないがトローチは冷蔵庫に入ってる。

「梅干は？」

キッチンへ戻って東海道に訊くと「いる」という答えだ。山陽はトローチのシートを出し梅干を箸で摘んでお粥の鍋に入れた。もう少しで出来上がるが、途中からでも入れておくと梅干の酸味がすこし円やかになるのだ。
しばらくして出来上がったお粥を山陽はダイニングテーブルに運んだ。水と薬もその脇におく。
東海道は解かした梅干の一片と共に蓮華にとった一口をゆっくりと口に運んだ。冷ましてもまだ熱いそれをハフハフと食べる。山陽が見守るなか蓮華を再び動かした。山陽は柔らかく笑みを浮かべる。

「食べられそうだな」
「ん」

口を閉じたまま東海道が頷いた。駅にいたときよりも元気になったように見えるが、一般的なものだろう。消化には体力も使う。食べたらすぐに眠くなるだろう。
それからしばし、量をほんの少しにしたのが功を奏して東海道は残すことなくお粥を食べきった。ものを食べれるのなら治りも早いだろう。
山陽は東海道の拳に薬をのせる。

「とりあえず総合薬にしたから。頭とか喉とか、どっか酷くなったら次は変えような」

コップの水も全て飲んだ東海道は、食器を下げて水だけ漬けて戻ってきた山陽に無言で両手を伸ばした。山陽はちょっと目を見開くが何も言わず毛布に包まれた体を抱き上げる。

「気持ち悪くなったりしてないか？」
「へいきだ。……頭はちょっといたい」

食べたことには問題はないようだ。頭痛は熱のせいか。どこかふわふわとした口調の東海道をベッドに下ろし、山陽はアイスノンを取りに行こうと曲げていた膝を伸ばした。その袖が先程の繰り返しのようにくんと引かれる。

「アイスノン、いるだろ？あと冷却シートも替えような」

額にかかった黒髪をそっと横に払う。そのまま頭を数回撫でると東海道の指がするりと外れた。胃に物を入れたこととで体力が消耗したのだろう。開いていた目もいつのまにか目蓋が下りている。
布団の外に出たままの指先を軽く握ってから布団の中に入れ、山陽は素早く寝室と冷蔵庫を往復した。タオルを二巻したアイスノンを頭の下に敷いてると東海道は心地よさそうな声を漏らす。
額のシートも取替え、「おやすみ」と囁く。