黒の婚約者 (ページ2)

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平和な飛行島の昼下がりに、事件は起きた。

昼ご飯を食べ、食後の散歩に出ていた赤髪とアイリスとキャトラは、空に光るものを見つける。
不思議な光だと見つめていたが、よく見ると凄まじいスピードでこちらに近づいてきているようだ。
光の速さで迫る"ソレ"を避けきれず、"ソレ"は2人と1匹の近くに勢いよく落下した。

「なんなのよー！」
「きゃーー！」

キャトラとアイリスの叫び声が聞こえ、咄嗟に赤髪は2人を助けようと手を伸ばす。
しかしそれは何者かによって遮られた。

「見つけた。やっと見つけましたよ」

落下した時の砂煙の影響で、声の主の姿は見えない。しかし、声の高さからそれが女性だということが分かった。
そして赤髪は自身の腹部に妙な圧迫感を感じた。

―――誰かが、自分の上に乗っている！

「大丈夫ですよ。殺しはしません。殺しは…ね？」
「誰かそこにいるんですか！？」

透き通るような美しい声。
そこから発せられる物騒な単語に、アイリスが反応する。
しかし女性はアイリスの問いに答えることはない。

「探しましたよ。――――闇の王子」
「……！君は……」

赤髪は目を丸くした。
特定の人物しか知り得ないことを、彼女は知っている。彼女は、一体……。

「申し訳ございません。自己紹介がまだでしたね」

彼女がそう言うと、腹部の圧迫感がなくなり、砂煙も晴れる。
赤髪の目の前にいたのは、輝く美しい銀髪と深い海のように透き通った藍色の瞳を持った女性だった。
女性は膝をまげ、まるで貴族のご令嬢がするような礼をした。その所作の一つ一つが流れるようで、赤髪は思わず見入ってしまった。

「私はリーベ・シュヴァルツ。さすらいの冒険家で、貴方と同じ黒の民でございます」