最後の恋 (ページ13)

今日:7 hit、昨日:4 hit、合計:163,342 hit

・ページ13

初めて彼女を見た時、〈運命〉を感じたとか、そんなドラマチックな空気はちっとも流れなかった。

1ヶ月ぐらい過密スケジュールが続いてて、ようやくまともな時間に仕事が終わって、本当に久しぶりにゆっくり飲めると思って、あのBarに行った

1人で飲むつもりだったけど、高校からの友人を見かけて、思わず声を掛けた

咄嗟に声を掛けたから、誰かと一緒にいるのなんてすっかり頭の中から抜け落ちていた

話の流れで一緒に飲む事になって、藤野と同じ病院に勤めてる看護師である事を知った

彼女を見た時の第一印象は「落ち着いた子」で、話してる内に「話しやすい子」だなと感じた

今思えば、俺の話に合わせて絶妙なタイミングで相槌を打ってくれて、聞いて欲しい所で質問をくれて、真剣に話を聞いてくれる姿勢に好感を抱いた。

2度目に会った時はお互いに1人だった

Aちゃんの方が先に1人でカウンターで飲んでて、

でも、この前とは雰囲気が少し違っていた

何か考え事に集中してるのか、出されたカクテルに口も付けていない

何か力になれればと思い、意を決して話し掛けてみると言葉を濁してはいたけど、俺も経験した事のある悩みだった

目標に近づくために努力してきた、

でも、いざそのチャンスを目の前にすると尻込みしてしまう

Aちゃんの悩みが具体的にどんなものかは分からなかったけど、俺なりのアドバイスをして

店を出る時には何かを決意した顔をしていたから、少しは役に立てたと俺自身嬉しかった

思えば、この時に連絡先を聞いておけば良かったのに、なぜか遠慮してしまって聞く勇気が出なかった

「またここで会おう」なんていつ会えるかも分からないような曖昧な約束しか出来なかった

仕事していても、ふと「Aちゃん、大丈夫かな？」とか「もしかして今夜あのBarで会えるかもしれない」と頭を過ぎる回数が増えて、

あぁ、俺あの子のこと好きになるかもしれない

何とも言えない不思議な感覚だった

昔から俺は一目惚れは絶対にしない

会う回数を重なて、徐々に好きなっていくタイプの人間で

だから「好きになるかもしれない」という感覚自体が自分の中で訳分かんねえ感覚で何とも説明しがたい

でも、不思議と会うのをやめようという考えにはならなかった

この時はまだ、これが最後の恋になるとは思ってもいなかった