天使のいないところ (ページ33)

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「お前バカか？」

・・・その態度は謝らないんですね

『…もういい、帰る』

「早いな」

『疲れてるの！どっかの誰かさんと違って1日働いたからね、わたしは！』

ストレスを発散するように大きな声を出したわたしに、いよいよ付き合いきれなくなったのか征司郎は面倒くさそうに顔の前で右手を振る

病棟勤務の日、担当患者の点滴を準備していると項垂れた様子で同僚がナースステーションに戻って来る

『どうしたの？』

同僚「子ども点滴、何回刺してもルートが取れないの」

『子どもは血管見えないし、難しいから』

仕方ないよと声を掛けて通り過ぎようとすると、勢いよく二の腕を掴まれた

『わぁっ！何？』

同僚「点滴取るの得意だよね？代わって！」

『え～、』

子どもは難しいんだって

同僚「私はもう無理！お願い！」

『…やるだけやってみるけど、あんまり期待しないでね』

同僚「ありがとう、大好き！」

調子の良い同僚に見送られて、子どもの病室に向かう

コンコンッ

『失礼します』

ベッドの上にいるのは年齢より幼くみえる女の子、何度か針を刺された後だから少し涙が残って見える

そばにいる母親に会釈してベッドに近づく

『何度もごめんね、小春ちゃん』

小春「また針するの？」

『そう、お薬を使うためには必要なんだ

何度も頑張ってくれたと思うんだけど、もう1回だけ、お姉ちゃんと頑張れる？』

ベッドサイドにしゃがみ込んで小春ちゃんより目線を低くして頼んでみる

小春「……いいよ」

『ありがとう』

痛い思いをするのは嫌だけど長い入院生活で我慢しなければいけない事を理解している

まだこんなに幼いのに、この子は同年代より大人だ

子ども特有の細くて白い腕に駆血帯を巻いて、自分の指先で血管を探していく

あった、ここだ

目に見えはしないけど、慎重に探せば分かる、この感触は間違いなく血管だ

『ごめんね、チクっとするよ

小春ちゃん、パンはパンでも食べられないパンってなーんだ？』

小春「え？」

『ほら、考えて？食べられないパンは何だろうね？』

小春「えーっと、えーっと」

小春ちゃんが一生懸命に考え出して、意識が腕から逸れた瞬間に針を血管に向けて刺す

問題なく逆血が来たことを確認して点滴につなげる

『お疲れさま、よく頑張ってくれたね』

小春「えっ？終わったの？」

小春ちゃんはビックリしたように自分の腕を見てる