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征司郎がスナイプ手術を執刀直前に急遽中止した日から、高階先生と世良先生は時間があれば空いているオペ室で実験のような事を繰り返していた


今日ついたオペで使用した資料を2人がいる部屋にしか置き忘れてしまって、どうしても入らなければならなかった

気付かれないようにそ〜っと部屋に入って資料だけ取るつもりだったので、人間というのはこんな時に限ってヘマをしてしまうものらしい

ガタンッ

『・・・すいません』

世良「うわっ!」

高階「鬼頭さん?」


『すみません

この資料をどうしても取りたくて・・・集中されてるので声を掛けるのもどうかと思って、静かに取って出て行く予定だったんですけど』


高階「構いません、こちらこそ気を使わせてしまって申し訳ない」


『興味本位で聞いても?』

高階「どうぞ」

『これって・・・心臓ですか?』

水槽の中に浮かぶ半透明のピンク色をした心臓模型を指さした

高階「そうです

この前中止になったスナイプ手術を受ける患者の心臓を3Dプリンターで模型にしました」

『すごい・・・3Dってこんな精密に再現できるんですね、初めてみました

ジャングルみたいな心筋で難しいんでしょう? この患者にスナイプを使うのは』


世良「よくご存じですね」

『カンファレンスに出席していたので』

高階「狭いジャングルでもルートはあります

何としてもそれを見つけて、今度こそスナイプ手術を成功させてみせます」


スナイプ手術で患者を救いたいのか

それとも

スナイプ手術で論文を書きたいのか

『頑張ってください、ルートが見つかるように祈ってます』

高階「ありがとうございます」





休憩時間に仮眠室に行くと、征司郎が珍しく昼寝せずに起きてソファに座っていた

手元を見ると、心臓が描かれた資料を手にしている


そこに英語で難しい単語を書いて、赤い線で真っすぐに心尖部から僧房弁に向かって線が引かれていた


『この前スナイプやめた人の心臓?』

「なんだ、いたのかよ」

『肥大型心筋症でスナイプの挿入は難しいんじゃなかった?』

「ルートがない訳じゃない」

『スナイプできるの?』

「・・・俺がやればな

高階の腕じゃ無理だ」

『ふぅん』

あんだけスナイプのルートを見つけるために頑張ってるのに、高階先生がかわいそう

『で、結局やるの?』

「どうだろうな?

お前、このオペに入らないんだろ?」

『まだその話してたの? 何回聞かれても入りません』

「何回聞いても冷たい返事だな」

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作者名:water lily | 作成日時:2018年5月1日 0時

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