天使のいないところ (ページ26)

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返事をすぐに出て行っちゃったけど、征司郎がスナイプ手術？

『・・・有り得なさ過ぎて、雨降りそう』

『お疲れさまです、スナイプ手術をする渡海先生？』

勤務終わりに医局の仮眠室に行ってみれば、ソファに機嫌悪そうに寝転んでいた

「・・・喧嘩売ってんのか？お前」

『いくら教授命令でもスナイプを使うと思わなかった。

あれだけオモチャ、オモチャ言ってたくせに』

「ジャングルみたいな心筋に入れるんだ、面白そうだろ？」

・・・また悪い顔して笑ってる

机の上に置いてあるスナイプマニュアルは開かれた形跡はない

「お前入んの？」

『入らない。今度のスナイプ手術の器械出しは猫田さん

良かったじゃない、似た者同士で名コンビだって噂になってるわよ』

「くくっなに？妬いてんのか」

『・・・・・』

「Aちゃん、可愛いとこあるな」

『スナイプに関わるとろくな事ないって聞くし？メンバーから外れてラッキーっていう心境』

「つまんねえな」

『マニュアルちゃんと見といた方が良いんじゃない？今度のは難しいんでしょ？』

「どんだけ練習したって失敗した奴いるけどな？」

『それ言われると何も言えなくなるね

じゃあ、おやすみなさい』

「あぁ、気を付けて帰れよ」

スナイプ手術当日、他のオペの空き時間に覗いてみると、征司郎がメスを握っていて、まさに執刀直前だった

『(タイミング良いね、見れるかな？)』

オモチャと呼んでいたスナイプを征司郎が持っている所を見たくて、扉越しに窓から覗いていると
モニターを見た征司郎が急にメスを置いた

『(何かあったの？)』

手袋を外して、こっちに向かって歩いてくる

『え？スナイプしないの？』

「なんだ、見てたのかよ？」

『何がダメだったの？』

「あんな心筋にスナイプ突っ込んだら、心尖部から出血して患者死ぬぞ」

『・・・そう』

トン

征司郎がわたしの肩を軽く叩いて手術室から出て行く

心外チームにいるから、他のスタッフよりは心エコーや心電図も診れるつもりでいるけど、あのモニターで心臓のどこが悪いかなんて、わたしには全く分からない

高階「渡海先生、待ってください」

世良「渡海先生！」

征司郎から少し遅れて、2人が出て来る

征司郎が言う【心尖部の異常】を術前に見つけられなかった2人

それが外科医としての差なのか、

見つけてしまう彼が凄いのか

『医者も大変ですね』