天使のいないところ (ページ3)

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佐伯教授の1番弟子を自負している横山は、佐伯から患者を託された事に感動しているように処置を請け負った。

ここに猫田がいたなら、これ見よがしにため息でも吐いてる場面だろう。

第1助手を垣谷に代えて、横山は第3オペ室に向かう。

横山「早田、第3オペ室の中継モニターを用意しろ！それとインカムも！」

大動脈解離の処置は1分1秒を争う

患者はすぐに第3オペ室へと運ばれた。

超緊急のオペで麻酔科医を始め、MEも急ピッチで人工心肺(ポンプ)の準備をする。

輸血や器具を取りに行くのに人手が必要になる。

数名の研修医が第3オペ室に向かって走っている足音が第5オペ室にいるAにも聞こえていた。

『(すごい足音・・・オペ室は走っちゃいけないのに。何かあったのかな？)』

チラっと外を見るが既に足音は消えて、誰の姿も見えない。

何かあったのか？と廊下に出て確認しようとしたとき

Ns「・・・宮里さん」

後輩の不安そうな声が聞こえて、すぐに振り返った。

『どうしたの？』

第3オペ室で横山がモニターを介して佐伯教授からの指示を受けて、大動脈解離に対して上行大動脈置換術を始め、第1オペ室では佐伯教授がVT(心室頻拍)の中、縫合を進めていた。

2つのオペ室では緊迫した空気が流れているが、Aがいる第5オペ室ではゆっくりとした空気でオペが進んでいた。

第5オペ室では婦人科の鏡視下手術が行われている。開腹のように大きくお腹を開けるのではなく、2cm程度の傷をお腹に数か所開けて、そこからカメラと長い鉗子を入れて行うものだ。

このオペの特徴は傷が小さくて済むことと、開腹に比べて圧倒的に出血量が少ないことにある。

・・・1年目の後輩は終始不安そうにしているが

『大丈夫よ、上手にできてるから。こっち見てないで、あなたもしっかりモニターを見なさい。』

「血、そこに無いわよ！輸血部に行って！RBC(赤血球輸血パック)4単位」という猫田が指示を飛ばす大きな声と、「はい！」と返事をする男の声がした。

『(輸血が必要なくらいの急患・・・てことは心臓外科か)』

まあ、猫田主任がいるなら大丈夫だろうとAは目の前の後輩に集中する事にした。