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朝から賑やかな朝食を終えて、身支度を済ませる。
Tシャツとジーンズというラフな格好に着替えて、ソファに座ってマネージャーが迎えに来てくれるのを待つ。
テレビで朝のニュースを見ながら、フローリングで絵本を開いて1人で楽しそうにしてるあきを見て、ふと考える。
昔の俺は、マネージャーが迎えに来るギリギリまで寝てるタイプだった。
こんな風に朝起きて、迎えに来るのを待ってるなんて昔の俺からしたら有り得ない事だ。
俺の仕事柄、普通の父親よりも子どもと過ごせる時間はきっと短い。
男の子はあっという間に大きくなって1人で歩いて生きていく。
そう思うと、あきはあと何回俺の膝に座りたいと甘えてくれるんだろうか。
それは意外と自分が思ってるよりもチャンスは少ないかもしれない。
「パァパ! ん!」
ジーっとあきを見てると急に差し出される絵本
「はいはい、次のページね」
甘えん坊のあきは絵本のページ捲りすら、やってもらおうとする。
前に一度 甘やかし過ぎだと思って怜理に言った事があるけど、『わたしが何か家事してて手を離せない時は、ちゃんと自分で捲ってるよ?』と返された。
たんに自分に構って欲しいだけなんだと分かってからは、出来るだけ あきの我儘を受け入れるようになった。
柔らかい子ども特有の髪の毛をゆっくりと撫でながら、楽しそうに絵本に話し掛ける姿を見ていると、ソファーに置いたスマホが着信を知らせる。
「はい、山下です。 了解、今から降りるわ」
俺がソファから立ち上がると、何かを感じ取ったのかサッとあきが振り返る。
やばい、泣かれる…
「やぁ!パパー!やぁぁぁ!」
そう思った時には手遅れで…そんな小さい体のどこから そんな声が出るんだと思う大声で泣き始めてしまった。
「あき、パパお仕事だからさ? ママと待ってて、な?」
抱き上げて、あやすけど効果はゼロ…むしろ「待ってて」と言った瞬間にボリュームが上がる。
パタパタと怜理が走って来て、この光景を見て思わず苦笑い…
『もう時間? いいよ、あきこっちにもらうから、ともくん行って?』
怜理が手を伸ばすけど、あきは小さな手にこれでもか!と力を入れて、俺のTシャツを握ってる。
「うわぁ もう仕事行きたくねぇ…」
『しがみつかれちゃうとね…ほら!パパも行ってきますだから、あきはママと待ってようね。』
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作者名:water lily | 作成日時:2017年11月12日 23時