悪の華【黒執事】 (ページ27)

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『でも宝石て持ってるだけでは価値が無いと思わない？

身に付けたり、売ってお金にしたりしないと』

「盗んだ犯人は持ってるだけで満足するタイプだったんじゃないか」

『危険を冒して盗んだのに？』

「まあ、犯人を捜しているロンドン警視庁(スコットランドヤード)の面目はない

A、犯人を捕まえようとしてるのか？」

『探偵としての初仕事にしては悪くない案件ね』

ﾄﾝ､ﾄﾝ

指で机を叩きながらヴィンセントが目を細める

「本気で屋敷から出さないようにしようか？」

『冗談だから、ヴィンセント

プロの警察が捕まえられないのを素人のわたしでは無理なのは自分でも分かる

そこまで思い上がったりしないわ』

いくら恋愛小説より、推理小説を好んでいると言っても、所詮は蝶よ花よと育てられた貴族の娘だ

そんな手柄を上げるより先に、危ない目に遭うのが先のは分かり切っている

-at midnight

『まだ休まないの？』

居室で本を読んでいるヴィンセントに声を掛ける

「あともう少しここにいるよ、君は先に休んで」

『おやすみなさい』

「おやすみ、A」

ﾁｭｯ

いつものように唇を重ねて、Aは寝室へと向かう

ナイトガウンに着替えて、メイドにも休むように伝えた

ベッドに横になると、ロンドンに来た疲れが溜まっていたのか、すぐに瞼が降りてきてしまう

ヴィンセントがベッドに来るまで起きていようと待っていたのに、それは出来そうにない

明日はできれば屋敷(マナーハウス)に戻りたい

せっかく花瓶を買ってもらったのだし、温室で待っている薔薇のお世話をしたい

ｶﾞｼｬﾝｯ

不意に物音がしてAの意識が浮上する

うっすらと目を開けると、まだ隣にヴィンセントの姿はない

居室で別れてから、それほど時間が経っていないのか

彼に限って、居室でうたた寝してしまうなんて粗相はしないだろうが、気になって来た

それにさっきの物音は何だったのだろう？

起きようと思うのに、まだ意識が夢と現実を彷徨っているのか体を起こす事ができない

ｶﾞﾁｬｯ

どれぐらいウトウトしていただろうか、扉を開ける音がした

この寝室にノックなしで入って来るのはヴィンセント以外にいない

『ヴィンセント？』

「ごめん、起こしたね」

ヴィンセントが申し訳なさそうな顔してベッドの端に腰掛ける

『ううん、起きて待ってようと思ってたんだけど』

彼に向けて両手を伸ばすとヴィンセントが体を屈めた。