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昨夜はあんなに不安定に見えたのに、朝になってみればいつも通りで、
あれ、夢だったのかな？って自分で自分を一瞬疑うくらいAは普通に……振る舞っていた
俺と目が合う時はいつもみたいにニコニコしてるくせに、ふとした瞬間に遠くを見てたり、無表情になってたりする
本当なら昨日みたいに甘やかして、Aが抱えてるもんが何なのかを聞き出して、一緒に解決してやりたいけど
いかんせん、ドラマ撮影が佳境を迎えてる今はそんな余裕も時間も作ってやれそうにない
Aは俺と違って、ドラマや映画の撮影が始まると少なからず役に入り込むところがあるから、役が移ってしんどい思いしてんのかな
そうだとしたら、いつものように自分で区切りつけて割り切って役と自分を切り離すだろうけど
昨日のあの感じは役がどうのこうのって感じじゃない気がするんだよなぁ
「Aー、俺、行くからー」
玄関で仕事に出掛ける事をリビングに向かって告げるとパタパタとAがスリッパで駆けて来る
『行ってらっしゃい』
「んっ」
チュッ
いつものようにキスをして出て行く
甘いなぁ、Aちゃん
’普通に’見えるように振る舞ってるつもりなんだろうけど、それが普通じゃないんだよ
ドラマ撮影が始まるといつも持たせてくれる保温ボトルに入ったコーヒーを今朝は渡されなかった
マネージャー「おはようございます」
「おはよ」
マネージャー「ようやくクランクアップですねー、お疲れさまでした」
「どうもありがと」
ドラマの習慣になってる、〈撮影期間中は同じ物を朝食にする〉というルールに従って、このドアラマの期間中は毎朝メロンパンを買ってもらってる
それをいつものように受け取りはしたものの…
マネージャー「食べないんですか？」
「あ〜、そうね」
コーヒーなしでメロンパンはキツイよね
「あっ、あのさ、ちょっと頼みがあるんだけど」
マネージャー「はい、何でしょう？」
「今日何時に帰ってくんの？」
『う〜ん、21時ぐらいかな？』
「夕飯一緒に食べる？」
『うん、何がいい？』
「ハンバーグ」
『ふふっ、分かった。材料買ってから帰ってくるね』
「いいよ、俺が休みだから買い物しとく」
『そう？ありがとう
じゃあ行ってくるね』
クランクアップ翌日で俺は今年最後なんじゃないかという1日オフをもらったけど、あいにくAは仕事でタイミング合わないねぇ
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作者名：water lily
| 作成日時：2018年12月31日 15時
