第27話 ページ30
真希さん達と別れた後、私は熱くなった頭を冷やすために手洗場で頭から水を被っていた。
蛇口から流れる水の音と一緒に、禪院の言葉が頭の中に響く。
“五条家に捧げられた贄のくせに”
消えない、消えない、消えることのない、私を貶す言葉。
死ぬまで私の人生に付き纏うであろう言葉。
私の心を貪り続けている言葉。
閉鎖的な空間において、一度広まった言葉はそう簡単に消えることは無い。私はずっとこの“事実”から逃げることはできない。
だから強くなって貫こうと決めたんだ、自分自身を。
強くなって、“ただの呪術師の五条Aだ”と主張するために。
強くなければ、自分の言葉は誰にも届かないからだ。少なくとも、この呪術界では。
水を流していた蛇口を閉める。毛先からポタポタと水が零れ落ちる。その様子を見て心を落ち着かせる。
地雷を踏まれたとはいえ、禪院に殺気を向けたのはまずかった。もしあのまま真希さんが止めてくれなかったら、間違いなく殺していただろう。
真希さんは禪院のことを大事に想っているのは知ってる。妹が殺されそうになったんだ、嫌に決まってるだろう。だからこそ、私は謝った。地雷を踏んだあっちが悪いが。
それに、もし禪院を殺してたら、同じ呪術師を殺した私は呪術規定に則って処刑されてた可能性もある。そうなったら悟への協力どころか、自分が死ぬことになってた。やっぱりやりすぎたな、と反省する。
「そもそも何であんなにキレたんだろ、私」
ああいう言葉を浴びせられるのは、別に五条家にいたら日常茶飯事だった。年中忙しい悟がいなければ連中は言いたい放題だったからだ。確かにそれは辛かったし、ずっと耐えてきた。
けど、高専に来てから早3か月。それらの言葉を聞くのが久しぶりだったんだ。
高専の東京校は御三家の関係者が少ない。だから、ここ3か月間の私の心は穏やかだったんだ、堪えるものがなくて、私を傷つける言葉がなくて、安心しきっていたのかもしれない。
だから、久しぶりに聞いたそれに、五条家でいつも堪えていた理性が間に合わなかったんだ。
気をつけないと、また同じ過ちを繰り返しそうだ。
交流会では恐らく加茂も来るだろう。御三家の術師が揃うだけで気が疲れそうだ。
「けど“二度あることは三度ある”って言うしなぁ…」
そう呟くと、濡れた髪が夏の太陽に照らされて乾いていくのを肌で感じながら、釘崎達がいるであろう医務室に向かって、私は歩を進めた。
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ヨッシー(プロフ) - 内水 眞衣香さん» コメントありがとうございます！五条先生凄かったですね！アニメではまた違う美しさがありました！呪霊側との接触も上手く書けるように頑張ります！ (2020年11月15日 11時) (
レス) id: 27a5e91788 (このIDを非表示/違反報告)
内水 眞衣香 - 五条先生は目隠しを外したら、雪のように白くて素敵だと思いました。真人も登場して、これからの活躍が楽しみです！^_^ (2020年11月15日 11時) (レス) id: 57a8ad7f5a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ヨッシー | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/zyoui1/
作成日時：2020年11月7日 20時
