花柱�� ページ22
ふくれっ面をして、しのぶはカナエに言った。
「まあまあ、ごめんなさいね。言っておいたほうが良かったかしら。」
『なんだか、ごめんね？』
姉妹の間で話が進んでいくことに、Aはきまり悪くなってそう言った。
「Aさんはいいんです。来てくださって嬉しいですよ。ただ・・・」
「Aちゃんにおもてなししたかったのよね？」
「姉さん！」
少し顔を赤くして、しのぶが大声を出す。
笑い出したAとカナエの声が、辺りに響いた。
「こんなところで立ち話もなんだから、入って？Aちゃん。」
『じゃあ、お邪魔します。』
Aは蝶屋敷に足を踏み入れた。
立派な庭の奥に、大きな屋敷がどんと建っている。
療養所として使われることが加味されて、他の柱の屋敷よりも大きい屋敷が選ばれたのだろうか。
内部には、療養する隊士用のベッドなども既に運び込まれている。
蝶屋敷が稼働し始めるのも、もうすぐらしい。
裏の庭に面した縁側のある和室に、Aは通された。
縁側に腰掛けて塀の後ろの山をぼんやりと眺めていると、しのぶがお茶を運んできた。
『どう？しのぶちゃん。蟲の呼吸は。』
「まだまだです。でも毒の開発には少し進展があったんですよ。」
Aさんのおかげです。
逆八の字になっていた眉を水平にして、しのぶは「ぱぁっ」と効果音が出そうな笑顔を浮かべた。
これが、カナエが「好きだ」という笑顔なのか。
Aは納得した。
こちらまで嬉しくなるような満面の笑みだ。
『しのぶちゃんの努力の成果だね。』
「お待たせ〜。」
蝶屋敷の奥に入っていたカナエが姿を現し、二人に声を掛けた。
涼しげなガラスの器を三つ、お盆に載せて持っている。
『わぁ！寒天だ！』
器を覗いて、Aは歓声を上げた。
「Aちゃん、あんみつが好きだったでしょう？あんみつではないけど、作っておいたのよ。来てくれるだろうと思っていたから。」
カナエが自分の好みを覚えていてくれたことも、自分のために作ってくれていたことも、Aは嬉しかった。
それにしても、来ると分かっていたのか。
Aは微笑んだ。
やはり、カナエは「姉さん」なのだ。
寒天はとても美味しかった。
さすが、町一番の器量よしは伊達ではない。
『改めて、カナエ。柱就任、おめでとう。』
「おめでとう、姉さん。」
「ありがとう。二人とも。」
笑顔で向き合う三人の間を、春風が吹き抜けていった。
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ひかる(プロフ) - ちーさん» ありがとうございます！励みになります。 (2022年6月2日 18時) (
レス) id: 97f5eb0e61 (このIDを非表示/違反報告)
ひかる(プロフ) - ooooさん» ありがとうございます！頑張ります！ (2022年6月2日 18時) (レス) @page36 id: 97f5eb0e61 (このIDを非表示/違反報告)
oooo - え！！最高すぎます！！これからも頑張ってください！！ (2022年5月29日 10時) (レス) id: 79b285b7ae (このIDを非表示/違反報告)
ちー - ヤバすぎマジで好き！続きまってます！ (2022年5月23日 23時) (レス) @page20 id: 260906d624 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ひかる | 作成日時：2022年5月15日 10時
